2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of a multi-functional nanoparticle for the next-generation boron neutron capture therapy (BNCT)
Project/Area Number |
17K13027
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金 雅覽 筑波大学, 数理物質系, 研究員 (00794679)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | BNCT / ホウ素中性子捕捉療法 / ドラッグデリバリーシステム / 高分子ミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は、ホウ素と中性子の核反応を用いた放射線治療であり、既存の放射線治療より副作用の少ない治療法として期待されているものの、投与したホウ素化合物の腫瘍への集積は、必ずしも十分ではないのが現状である。本研究では高分子材料を基盤として、腫瘍に高度に集積し安全性と有効性を併せ持つ新たなBNCT製剤としてのナノ粒子の開発を目標としている。 当初の計画に従い、ポリエチレングリコール(PEG)とキレート能を有する高分子セグメントを結合させたブロック共重合体(PEG-b-Polychelator)を合成し、その側鎖にフェニルボロン酸(PBA)などのホウ素化合物、またはイメージングなどあらゆる機能を有する金属イオンを導入させ、ナノ粒子を作製した。ここで、ホウ素化合物の封入安定性は不十分であったが、金属イオンは配位結合により分子間を架橋しナノ粒子をさらに安定化することが出来たため、この高分子材料においては、BNCT製剤よりも、金属イオンを送達するイオンデリバリーシステムとしての開発を進めた。 一方、当初の目標であった新たなBNCT製剤の開発を目指し、もう1つの高分子材料として、PEGとポリ乳酸(PLA)、そしてPEG末端のPBAからなるブロック共重合体(PBA-PEG-b-PLA)を合成した。この高分子は水中で自己組織化によりナノ粒子を形成すると共に、PBAはナノ粒子の表面に露出されるため、BNCT製剤になるのはもちろん、PBAのシアル酸への特異的結合能から、シアル酸高発現の転移性の高い癌細胞を選択的に認識する設計となっている。このナノ粒子はヒト乳癌細胞に対し、細胞膜を効率的かつ迅速に認識し、細胞質へ集積することを確認した。さらに、皮膚癌モデルマウスへの尾静脈投与の48時間後においても、腫瘍組織の凍結切片を観察した結果、ナノ粒子の腫瘍組織への優れた集積能が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い、キレート能を有する高分子材料を合成し、ホウ素化合物や金属イオンを導入させ、ナノ粒子を作製した。生理条件下でのナノ粒子の安定性及び導入分子の放出能を評価した結果、ホウ素化合物の封入安定性は不十分であったが、金属イオンの封入安定性は非常に高く、体内投与において金属イオンの非特異的拡散による急性毒性を効果的に抑えると考えられる。すなわち、金属イオンの毒性を抑えながら、そのあらゆる機能を最大限に発揮させる、治療・診断を同時の行えるセラノスティクスに向けたナノメディシンの構築が期待される。このナノ粒子の作製・評価に関しては、平成29年度中に3回の学会発表を行った。 一方、本研究課題の当初の目的である新しいBNCT製剤の開発を図るため、計画には無かったもう1つの高分子材料を合成した。これはPEGとポリ乳酸(PLA)、そしてPEG末端のPBAからなるブロック共重合体(PBA-PEG-b-PLA)で、PBAのシアル酸に対しての特異的結合能により、転移性の高い癌細胞を選択的に認識する設計となっている。このPBA-PEG-b-PLAからなるナノ粒子は、in vivoでの評価で癌細胞への優れた集積能を示した。従って、このナノ粒子を用いた将来のBNCTにおいて、腫瘍組織には十分なホウ素濃度が得られ、また血中のホウ素は完全に代謝された時点での中性子照射が可能となり、副作用を極限まで抑えられると期待される。 当初の設計通りの高分子材料はBNCT製剤としての活用が難しいと判断したが、新しく設計した高分子材料は腫瘍への優れた集積能を示したため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は高分子材料の最適化によりナノ粒子を安定化させること、また腫瘍組織への十分な集積能を得ることを重点に進めたきた。今後は、細胞毒性や動物安全性の評価と共に、体内動態の分析を行う。血中滞留性のみならず、各臓器への集積性、臓器障害の評価をも行う。特に正常マウスのみならず、ゼノグラフトモデルおよび化学発生癌モデルに対してもその評価を進めていく。最終的には、ナノ粒子投与後の中性子照射における抗腫瘍効果の検証を行うため、共同利用を行っている京都大学複合原子力科学研究所の原子炉、また茨城県東海村で開発中の加速器型BNCT装置を用いて、癌モデルマウスへの照射実験を進める。
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Research Products
(3 results)