2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下田 麻子 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (90712042)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エクソソーム / 糖鎖 / レクチンアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
エクソソームはあらゆる細胞が分泌するナノメートルサイズの小胞であり、機能性分子を細胞から細胞へと運ぶ生体由来の情報伝達キャリアとして重要な役割を果たしている。現在までにエクソソームに存在するタンパク質やゲノムの特定が盛んに行われており、疾患特異的なバイオマーカーや医薬品としての応用が期待されているが、細胞への取り込み機構や分離技術など未だ多くの課題が残されている。細胞膜表面にあるタンパク質や脂質のほとんどは糖鎖で覆われており、分化、免疫、感染、がん化などの生体応答に重要な役割を示している。細胞から放出されるエクソソーム表面にも糖鎖が存在するが、解析手法が難しいことからエクソソームの糖鎖研究はほとんど進んでいないのが現状である。そこで、本研究ではエクソソーム表面糖鎖に着目し、細胞との相互作用との関連性を検討した。 脂肪由来間葉系幹細胞から超遠心法にてエクソソームを回収し、糖鎖の解析にはエバネッセント波を用いた蛍光励起検出法によるレクチンマイクロアレイを用いた。本手法により、エクソソーム表面糖鎖を非破壊の状態でリアルタイムかつ高感度に検出でき、特にシアル酸認識レクチンと強く相互作用することがわかった。この結果からシアル酸依存的な細胞内取り込みが起こると考え、シアル酸認識レクチンであるSiglec (sialic acid binding Ig-like lectin)との相互作用を見たところ、in vitro, in vivoでその傾向が確認できた。現在、様々な細胞由来エクソソームについて同様の検討、比較を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般的な糖鎖解析法である質量分析法は詳細な構造を推定できるが、糖タンパク質から糖鎖を切り出す必要があり、エクソソームの場合においても構造を破壊して測定する必要がある。本研究で用いたレクチンマイクロアレイは糖鎖とレクチンの比較的弱い相互作用を検出するためにエバネッセント波励起蛍光を用いており、蛍光標識したエクソソームをアレイに添加し一晩静置するという簡便な手法であることが特徴である。本研究ではまず、脂肪由来間葉系幹細胞エクソソームの糖鎖解析を行い、シアル酸認識レクチンへ強く結合することを見出した。この結果をもとに、エクソソーム表面のシアル酸依存的な細胞内取り込み機構があることをin vitro, in vivoで示し、論文にまとめた。 間葉系幹細胞は骨、軟骨、脂肪、神経などあらゆる細胞へ分化する能力を持つことが知られている。そこで、本研究で用いた間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化誘導させ、同様にエクソソームを回収して糖鎖パターンの比較を行ったところ、分化に伴い6種類のレクチンへの結合が増加した。本結果は新たな骨芽分化マーカーとしてエクソソーム表面糖鎖が有用であることを示唆しており、この成果に関して特許出願を行った。エクソソームの回収条件やアレイ測定時の最適条件はすでに確立しており、今後は骨芽細胞以外の細胞への分化誘導や正常細胞からがん細胞まで色々な種類の細胞由来のエクソソーム糖鎖解析を行い、その機能を比較する。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは細胞の種類、分化前後などの条件を変えて網羅的に糖鎖解析を行い、そのパターンを比較してエクソソームに共通する糖鎖やある種の細胞に特異的な糖鎖を探索する。本年度はエクソソーム表面のシアル酸依存的な細胞相互作用について検討したが、その他の糖鎖(マンノースなど)や酵素による糖鎖切断後の取り込み挙動の違いなどを比較する。また、レクチンアレイ測定の際のエクソソームの蛍光標識方法についてもタンパク質染色と脂質染色で違いがあるかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
細胞培養のタイミングにより間葉系幹細胞培養用培地1本分の未使用額が生じたが、次年度にそのまま培地購入費として使用する。
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