2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of an artificial bone with enhanced biological properties and its mechanism elucidation
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17K13031
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小西 敏功 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (10587843)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リン酸カルシウム / 無機イオン / 結晶構造 / 骨誘導 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨芽細胞の非存在下でも骨を形成する「骨誘導能」をもつ「自家骨」は、骨補填材として最も優れている。一方、リン酸カルシウム系人工骨は骨誘導能をもたないため、確実な骨癒合および早期治癒が得られない。そこで、2種類の「無機イオン」、すなわち、骨形成を促進する「ケイ素」および血管形成を促進する「銅」を利用して、人工材料のみで自家骨の「骨誘導能」に匹敵する「骨形成能」および「血管形成能」を引き出す高機能化人工骨を創製する。さらに、固体核磁気共鳴を用いて、今まで明らかにされていなかったリン酸カルシウム人工骨の結晶局所構造と生物学的機能発現との関連について、その機序を追求・解明する。 平成29年度は、ケイ素および銅含有リン酸カルシウム(Si-Cu-TCP)の合成条件を確立することを試みた。カルシウムおよびリン酸源を出発原料として、Caに対して0-10 mol%のCu、0.8 wt%のSiを含むβ-TCPの合成を試みた。得られた試料の結晶構造・分子構造解析の結果から、銅が5, 10 mol%合成試料にはわずかに副相(ピロリン酸カルシウム)を含むものの、すべての試料はβ-TCPを主相とすることが明らかとなった。また、元素組成分析から仕込み量とほぼ同量の銅およびケイ素が試料中に含まれていることが確認された。また、銅含有量の増加とともに溶解性が低下することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、ケイ素および銅含有リン酸カルシウム(Si-Cu-TCP)の合成条件を確立することを試みた。結晶構造・分子構造解析の結果から、銅およびケイ素を含むβ-TCPを主相とする試料の合成に成功した。また、生物学的機能発現に関わると考えられる溶解性の差異を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
[1] 高機能化ペースト状人工骨の生物学的機能評価 骨芽細胞(MC3T3-E1)とヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を人工骨材料に播種し、その細胞増殖性、石灰化率および血管形成能を評価するとともに、機能発現に関連するタンパク質の発現を調べる。血管形成能は、所定期間培養後に組織切片を作製・染色し画像解析により定量的に評価する。細胞毒性を示さずに骨形成能および血管形成能を示す銅濃度を明らかにするため、これらの結果をTCP合成にフィードバックし、生物機能発現に最適なケイ素および銅含有量を明らかにする。
[2] Si-Cu-TCP結晶構造と生物学的機能発現との関連性の検討 ケイ素および銅含有量の違いによる結晶内局所構造の違い、特に結晶の乱れ(結晶周囲の水和相の割合)や31P周囲の遮蔽状態の違いなどから生じる生物学的機能の発現について、[1]で検討した機能発現に関連するタンパク質の発現との関連性を明らかにする。場合によっては、DNAマイクロアレーによりDNAの発現を調査する。また、人工骨からのケイ素および銅の溶出も機能発現に関係する可能性があるため、人工骨の表面分析、溶出試験等によりイオンの挙動についても関連性を検討する。Si-Cu-TCP結晶構造と生物学的機能発現との関係を裏付ける知見が得られた場合、Si-Cu-TCP合成にフィードバックし、合成段階でのSi-Cu-TCP結晶局所構造の制御を試み、その生物学的機能発現について検討する。
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Research Products
(3 results)