2018 Fiscal Year Research-status Report
機械的溶血の分子メカニズムの解明:微小孔形成と赤血球膜の相転移
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17K13033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
重松 大輝 大阪大学, 国際医工情報センター, 特任助教(常勤) (50775765)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リン脂質二重膜 / コレステロール / 細胞膜 / 指組構造相 / せん断流れ / 流体力学的不安定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,引張によるリン脂質二重膜の相転移のメカニズムを明らかにし,それが力学的負荷による微小孔の形成と膜の破断に与える影響を理解することを目的としている.平成30年度では,引張シミュレーションを行い,孔の形成・成長過程の観察を行った.当初の計画では,系は29年度に用いたものを用いる予定であったが,孔の形成・成長過程を見る上で系の大きさを拡大する必要がでたため,系を大きくした.それに伴い,計算コストが許容できないところまで増加したため,粗視化モデルを用いることにした.粗視化モデルを用いることで,計算コストが低下したため,脂質分子の種類やそれらの組成を変えた膜に対しても引張シミュレーションを行った.また,孔の成長等に深く関わっている物性値である線張力の推定も行った.その結果,膜の組成が変わったとしても,孔の形成・成長過程の膜構造変化に関しては大きな変化がないことが分かった.また,線張力の値は,膜全体の分子の組成ではなく,膜の縁部分の局所的な組成に影響されることが分かった. また,溶血現象がせん断流れ場中で起こることが報告されていることから,これまでの引張負荷だけでなく,せん断流れ場中でのリン脂質二重膜の挙動に関しても分子動力学シミュレーションを行った.このシミュレーションのために,局所的な温度をコントロールする計算コードの実装を行った.結果として,せん断流れ下では,流体力学的不安定現象により,膜に孔が形成されることが分かり,一定以上の大きさの膜ではマクロな線形安定性解析からその安定性が予想できることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計算コストの増加が予定通りの計算を困難にしたため,粗視化モデルの使用に踏み切った.その結果,様々な条件下での孔の形成現象が明らかになった.また,孔の挙動に深く関わる物性値である線張力を様々な組成の膜について算出することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度で用いたモデルでの結果と,平成30年度に用いた粗視化モデルの結果の違いについて議論する.そして,粗視化モデルでの孔形成と相転移の関係について,シミュレーションと自由エネルギモデルを用いて明らかにする.
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Causes of Carryover |
当該年度では,計画していたモデルでの計算ができなくなったため,計算コストの低い計算に切り替えた.それに伴って,年度内で計算されるデータの容量も見積もりより減ったため,HDDと関連機器の購入を見送ったため.次年度において,より多数の条件で計算を行う予定のため,見送った分については,都度購入する.
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Research Products
(7 results)