2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13036
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
増田 佳純 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20533293)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 超音波医学 / 心不全 / 左室内血流ベクトル |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の心不全の病態評価は心内腔容積の変化率(駆出率)など、心形態に基づいてポンプ機能が悪化しているかどうかを評価するものであった。Vector flow mapping(VFM)はドプラビーム方向によらずにあらゆる方向に流れる左室内血流、渦流そしてエネルギー損失などを定量的に評価できるため、心形態に依存しない心機能評価が可能である。 心不全のように左室が拡大し、収縮機能が低下すると、左室内での血液のうっ滞が認められる。流入から駆出の軌跡をたどること(流跡線解析)で、心室内のどの部位でどのくらい血流が滞っているか(ejection rate)を評価できれば、心形態にとらわれず、心形態が変化する以前に心不全を診断できる可能性がある。 本研究の目的はVFM から算出される左室内血流指標(エネルギー損失量、渦流)を用いて心不全の重症度を評価可能か検討する。また、流跡線表示から新規指標であるejection rate を考案する。 平成29年度は、麻酔開胸犬を用いて、前負荷増大時、後負荷増大時、ドブタミン負荷時における、左室内血流指標および新たに考案したejection rateがどのように変化するか検討した。前負荷時には左室拡大に伴う、渦面積の拡大およびejection rateの低下がみられた。後負荷時にはエネルギー損失量の増大およびejection rateの増大がみられた。ドブタミン投与時には、左室流入血流速度の増加に伴い、渦面積の拡大とejection rateの増大がみられた。以上より、左室の大きさおよび収縮性の変化に伴ってejection rateが変化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は血行動態を変化させた際のVFM指標の解析を行った。左室の大きさや収縮力の変化に伴って、渦の大きさだけでなく、新たに考案したejection rate も変化することがわかった。予備実験で心不全モデルの作成も行い、同様の指標を検討したところ、心尖部での血流のうっ滞およびejection rate の低下が示された。このejection rate の低下のメカニズムを検討するため、従来のエコー指標だけでなく、左室のねじれ指標も計測している。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験は当大学の動物実験規程に基づき実施される。人工呼吸器管理下の麻酔開胸犬(10頭)において、大腿動脈から左室内圧を測定するカテーテルを挿入し、正中切開し開胸する。頸動脈よりカテーテルを挿入し、エコーガイド下で左冠動脈起始部からマイクロスフェアを段階的に注入することで心不全モデルを作成する。従来のエコー指標(左室駆出率、1 回拍出量、僧帽弁血流速度波形、僧帽弁輪の最大拡張早期運動速度)、VFM 指標(渦指標、エネルギー損失、ejection rate)を算出する。また、左室のねじれ指標も算出する。エネルギー損失やejection rate は血流の速度と方向から得られる指標であり、左室形態と独立して左室内血流の効率を反映するものと考えられる。したがって従来計測されてきた心機能に比して、上記の血流指標が低下していれば、流れの効率が悪いこと、つまり、ポンプとしての心筋の仕事効率が低下していることを意味していると考えられる。この指標が確立されれば、駆出率が顕著な低下を示さなくても心筋の仕事効率が低下した時点での早期治療介入が可能になる可能性がある。また流入から駆出の軌跡をたどることでどの部位にどのくらい血流が滞っているか、なぜ滞っているかという病態生理およびその臨床的意義にせまることが可能になると考えられる。心不全時には心尖部で血流がうっ滞することに着目し、左室のねじれ指標も検討する。
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