2017 Fiscal Year Research-status Report
LC-Boosterを搭載した低侵襲磁気ハイパーサーミアシステムの開発
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17K13038
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
田倉 哲也 東北工業大学, 工学部, 講師 (00551912)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 複合型発熱素子 / ファントム / 励磁周波数 |
Outline of Annual Research Achievements |
寒天をベースとした生体を模擬したファントムを作製し磁界印可試験から生体による影響を考慮した励磁周波数のための検討を行った。生体を模擬したファントムのNaCl濃度が励磁磁束密度に与える影響を明らかにするために、空気の場合とファントムを配置した場合のサーチコイルの誘起電圧を周波数毎に測定したところ、周波数の上昇とともに誘起電圧が低下することが確認された。また、NaCl濃度が高くなるにつれて出力電圧が低下する傾向も確認された。次に、NaCl濃度が励磁コイルのインピーダンスに与える影響を明らかにするために、NaCl濃度が異なるファントムを励磁コイル上に配置したときのインピーダンスを測定したところ、抵抗分が,NaCl濃度の上昇とともに高くなることが確認された。ただし、人体の塩分濃度に近いファントムを用いた実験においては、ファントムの有無によるサーチコイルの誘起電圧の測定値や、励磁コイルのインピーダンスの抵抗分の変化が小さかったことから、人体を対象とした場合には励磁条件の周波数帯の幅は今回実験を行った範囲(~300 kHz)までは拡げても問題ないことが確認された。 次に、LC-Boosterを搭載する前の複合型発熱素子について、サイズ(長さ、直径)と発熱の関係について数値計算による検討を行った。長さを固定した状態で直径を大きくした場合における単位時間当りの熱量と発熱密度の関係を明らかにすることができた。特に、形状のアスペクト比が熱量の値に影響を与えているため、LC-Boosterを搭載する複合型発熱素子の形状は高アスペクト比に設定する必要性が確認された。また、LC-Boosterと複合型発熱素子の等価回路による解析からLC-Boosterの巻線抵抗、インダクタンス、LC-Boosterと複合型発熱素子の結合係数などの各定数が発熱に与える影響が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LC共振型ワイヤレス給電技術であるLC-Boosterを発熱素子に導入した低侵襲磁気ハイパーサーミアシステムの構築を目指して、平成29年度は複合型発熱素子へLC-Booster技術を導入するために必要な条件を明らかにすることを目的とし、主に、生体による影響を考慮した励磁周波数の選定とLC-Boosterを搭載した複合型発熱素子の構成を決定する予定であった。前者については、生体を模擬したファントムのNaCl濃度を調整した実験から励磁コイルのインピーダンスと励磁コイル周辺の磁束密度に与える影響を励磁周波数の観点から特定し、励磁条件としての周波数選択の幅を確認することができており、おおむね実施できている。後者であるLC-Boosterを搭載した複合型発熱素子の構成については、土台となる複合型発熱素子の形状として、数値解析結果から長さと直径の役割が明らかになっている。また、等価回路による数値解析から、複合型発熱素子の各定数、LC-Boosterの各定数、そして両者の間の結合係数が発熱に与える影響について確認できているため、おおむね実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に得られた結果は、特に等価回路の数値結果においては設計に必要な様々な条件を特定することが目的であった。そのため、発熱素子の高発熱化に向けて実機の特性を反映させる必要がある。中でも、等価直列抵抗は実機を用いた測定が必要な定数であり、平成30年度はLC-Boosterを搭載した複合型発熱素子の実機を作製し、実機の各定数の測定を行う。その結果を等価回路における数値解析に反映させることで加温に効果的な発熱素子の実現を目指す。また、加温に必要な磁束密度を生み出すための励磁装置の検討も行う。発熱素子と励磁装置が揃った段階で周波数及び磁束密度を変化させたときの発熱素子の温度の時間変化と温度分布を測定し、励磁条件と温度特性の関係から発熱素子の性能を明らかにする。素子の加温能力をもとに、熱特性の異なる媒質中における発熱素子の温度分布をシミュレーションすることで、生体への適用を目指した際に必要となる情報を蓄積していく予定である。
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Research Products
(1 results)