2018 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中患者に対する前庭眼反射の定量的評価と前庭刺激時の脳活動の解明
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17K13055
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
光武 翼 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (00779712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 前庭脊髄反射 / 加齢 / 姿勢制御 / 前庭覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は(1)前庭直流電気刺激(GVS)実施時の立位姿勢制御機能を定量的に評価することによって前庭機能に関わる姿勢制御機能を明らかにすること,(2)GVSによる前庭覚刺激時の脳活動を計測することである.健常者を対象とした研究について論文執筆を行い,日本基礎理学療法学会誌に採択された.一方,脳卒中患者を対象とした研究は,近々投稿予定である. (1)健常者53名を対象に閉眼静止立位でGVSを実施し,その時の身体動揺の程度を加速度計で計測した.GVSは両側の乳様突起上に電極パッドを装着し,1.2mAの直流電流を通電することで実施した.これによって,GVS流電時に頸部に装着した加速度計がどのように動揺するのか解析することで前庭脊髄反射の評価を実施した.同時に,硬い床面上と柔らかい床面上で開眼および閉眼条件での立位保持能力を評価するmodified clinical test of sensory interaction and balanceも実施した.この評価方法は前庭機能が低下している対象者は柔らかい床上で身体動揺が大きくなることが示されており,姿勢制御機能における前庭覚情報の有意性を評価することができる.これら,両計測の関係性について解析するとともに加齢変化について調査を行い,本研究で得られた成果は,基礎理学療法学会誌に原著論文として採択された. また,健常者だけでなく,脳卒中患者30名に対してもGVS時の立位姿勢安定性を計測した.その結果,脳卒中患者は健常者と比較して身体動揺の有意な減少が認められており,前庭脊髄反射を含む立位姿勢制御機能が低下している可能性が示唆された. (2)MRI室内は磁気の影響から金属製の機器を内部に持ち込むことができない.そのため,MRI室内でも使用できるケーブルおよびトリガ,通電機器を購入し,環境調節を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脳卒中患者に対する前庭直流電気刺激(GVS)時の立位姿勢安定性の計測は終了しており,データ解析,論文執筆を行った.本研究の成果は,英文校正が終了し次第,somatosensory & motor researchに投稿する予定である. 一方,前庭刺激時の脳活動計測に関して,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使用してGVS時の脳血流動態の変化を計測した.GVSは耳後部から非侵襲的に前庭覚を直流電気刺激する神経生理学的手法である.まず,研究協力病院の承認を得て,外部トリガを使用することでMRI室内でも電気刺激が実施できる環境を整備した.fMRI計測は,MRI装置(現有機器,Achieva 1.5 T Nova Dual, Philips)を使用し,実験時には背臥位で身体を動かさないように指示した.実験課題は,電流刺激と安静を交互に繰り返すブロックデザインを採用し,30秒ずつ交互に4セット実施した.刺激部位はMRI室内でも使用可能な5×7cmの電極パッドを用いて両側の乳様突起上に1.2mAの直流を通電した.これらの実験デザインを確立した上で,9月から対象者を募集するとともに,計測を行った.現在までに44名の健常者の脳機能計測を終了しており,継続的にデータ収集に努める.これらの脳画像データを解析するために,画像解析ソフトウェアを導入した.研究環境が整うまで時間を費やしたことで,当初の予定より若干解析に入るまでの期間が遅くなっている.今後は,速やかにデータを解析するとともに,論文執筆を行っていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は継続的にデータ計測を行うとともに,脳画像解析および統計学的解析を行い,論文を執筆していく.画像解析は,解析ソフトウェアとしてMatlabとSPMを用いて脳画像の動きの補正,標準脳への変換,空間的平滑化を行い,前庭直流電気刺激(GVS)時の脳活動領域を特定する.この解析方法を熟知する目的で,8月に生理学研究所で行われる機能的磁気共鳴画像法(fMRI)解析に関するトレーニングコースへの参加を予定している. この解析で得られた脳機能データとGVS時の立位身体動揺を計測した対象者が同一の場合には,両者の関係性についても解析を進めていく.これらの確立した実験手順を基に,fMRI計測およびGVS時の身体動揺による前庭脊髄反射の神経学的メカニズムを解明する. 本研究を円滑に遂行するために,平成30年度に本研究に関する議論を行った堀川悦夫氏(佐賀大学医学部,教授),坂本麻衣子氏(佐賀大学医学部,准教授)とは,平成31年度も継続して研究方法および論文執筆に対して議論を行う予定である.また,臨床現場の意見を取り入れる目的で,岡真一郎氏(国際医療福祉大学,助教)や植田耕造氏(畿央大学,客員研究員)と研究内容について意見を伺うことで研究の発展性が期待できる.
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