2018 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中後のPusher現象の病態解明と直流前庭電気刺激の効果検証
Project/Area Number |
17K13081
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
中村 潤二 畿央大学, 健康科学部, 研究員 (30793723)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳卒中 / Pusher現象 / リハビリテーション / 電気刺激 / 前提機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中後に生じるPusher 現象(PB)は、座位や立位で麻痺側に倒れてしまう姿勢調節障害であり、日常生活活動に与える影響が大きい障害である。PBのメカニズムは明らかではなく、有効な治療法は確立されていない。本研究の目的は、PBの病態を明らかにするために、PBと前庭脊髄路との関連について検証するとともに、経皮上から前庭系を刺激可能な直流前庭電気刺激(GVS)を治療手段として適用し、その効果を検証することである。本年度は、PBと前庭脊髄路との関係を検討するために、GVS後に、ヒラメ筋H反射を計測し、H反射の変調の程度から、前庭脊髄路の機能評価が可能とされる方法を、確立させることを目的とした。まず前庭系を刺激する際のGVSの刺激強度がH反射に与える影響について調査し、刺激強度に依存して、H反射の変調が生じることを明らかにした。この結果は、国際誌Neuroreportに公表した。また同法の測定再現性についても調査しており、測定再現性は高いことを示しており、本結果を国際誌に投稿準備中である。また同法を脳卒中患者1例において実施しており、臨床応用可能であると思われる。今後、PBを含む脳卒中患者において、測定を行っていく。 またPBは垂直知覚の異常が報告されているが、その垂直知覚の検査に用いられる主観的身体垂直位(SPV)の結果は、研究により異なる。SPVの測定特性は不明な点もあり、その測定特性を調査した。SPV測定時に座面からの体性感覚や前庭感覚情報を変調させた際に、体性感覚が変調された際に垂直知覚の偏移が生じた。このことからSPVは殿部からの体性感覚に基づいて判断している可能性が示され、PBの病態解明の一助となると考えられる。本研究結果は、理学療法関連の学会にて公表し、国際誌への投稿準備中である。 PBを呈する患者へのGVSの影響については、予備的に数症例で実施し、随時実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験1の「PB現象と前庭脊髄路との関連についての検討」については、PBを呈する脳卒中患者に、前庭系への経皮的な電気刺激を用いた前庭脊髄路の神経生理学的評価を実施し、PBと前庭脊髄路との関連について検討する予定であった。それに先立ち健常者を対象に前庭脊髄路の計測のための最適な刺激パラメータや測定の再現性について調査し、脳卒中患者1例で実施したが、研究実施施設である西大和リハビリテーション病院においてPB現象を有する患者が乏しく、PBを有する患者で実施することが困難であった。昨年度からの計画の修正により、認知機能障害などの問題から前庭脊髄路の機能評価が測定困難であったPB症例においては、運動機能だけでなく高次脳機能障害の観点からの調査を行っている。 また、実験2である「PBに対する直流前庭電気刺激(GVS)の効果検証」に関しても同様に、PB現象を有する患者が乏しく実施することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
PBの病態の解明については、前庭脊髄路評価のための健常者での予備的研究の結果を、早急に公表できるように努めるとともに、PBを呈した脳卒中患者へ適応し、調査する。またPBの動作特性を調査するために、筋電図等を用いた動作解析を行うことも検討する。 また研究実施施設である西大和リハビリテーション病院においてPB現象を呈する症例が乏しいため、他の急性期病院(ベルランド総合病院)の協力を得て研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定であった垂直知覚測定機器が、仕様変更により価格も変更となり、購入が困難であったため、測定機器の購入を見送った。それに伴い測定機器は自作したため、予算よりも低額で準備することが可能であった。 また購入予定であった筋電計は、他の研究者が購入し、西大和リハビリテーション病院に設置したため、購入する必要がなくなった。 また旅費に関して,研究実施状況に遅れが生じたために予定していた学会に演題登録できなかった。そのため、旅費と演題登録費用の予算が必要なくなった。 他の急性期病院との共同研究を進める予定であり、評価物品の整備、被験者への謝礼金、電気刺激に用いる電極などの物品費、成果公表のための論文投稿費や旅費などで使用する予定である。またPBの動作特性を解析するための筋電計の購入も再度検討する予定である。
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