2017 Fiscal Year Research-status Report
血液透析患者の健康寿命を延伸させる腎臓リハビリテーション戦略の確立
Project/Area Number |
17K13097
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
河野 健一 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 講師 (10638480)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 透析 / 健康寿命 / 運動能力 / 歩行能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、血液透析患者の健康寿命の喪失につながる要因を明らかにし、運動指導を中心とした腎臓リハビリテーションが健康寿命を改善するかどうかを明らかにすることである。当該年度である平成29年度は、健康寿命の喪失に関する要因の調査を実施した。 まず、健康寿命の喪失を歩行能力の喪失と操作的に定義した後方視的調査では、4年間の観察期間中に歩行能力を喪失した患者は7%であった。その中でも、運動能力が低い(short physial performance battery: SPPB 8点以下)患者の相対オッズ比は10.6であった。SPPB8点は身体的フレイルと強く関連することが先行研究にて報告されており、運動能力を高く保ち身体的フレイルから脱却させることが健康寿命の延長に寄与すると考えられた。 また、研究計画の時点から健康寿命の喪失には急性疾患への罹患による入院が関与すると仮説を立ていた。急性疾患への罹患と健康寿命喪失の直接的な関係は次年度以降の調査となるが、平成29年度の調査では、急性疾患を罹患し入院した患者ほど運動に対する行動変容ステージが低いことがわかった。さらに、入院に至る可能性の高い疾患として下肢末梢動脈疾患(peripheral arterial disease: PAD)があるが、PADに関与する要因としてSPPBが抽出された。 以上の結果をまとめると、透析患者には運動に対する行動変容を進めるための教育的介入を行い、また下肢筋力、バランス機能、歩行速度といった運動能力を保つようなリハビリテーションを実施することが有用と示唆された。それによって身体活動量を維持、向上させることができれば、PADやその他血管疾患の発症予防につながり、歩行能力の喪失を防ぐことにも寄与すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、既存データにより後方視的調査が中心であったが、計画書通り前向きコホート観察研究を開始できた。ただし、研究協力施設が当初の計画より少ない状況にあり、サンプルサイズを十分に確保することができていない。上記の理由でやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度(平成30年度)は、前向きコホート観察研究の協力施設を2施設増やす予定である。本研究の実施期間は平成31年度までであり、サンプル中においてどの程度健康寿命を喪失する患者がいるか予測がつきにくい。今年度の後ろ向き調査では、健康寿命の喪失を操作的に歩行能力の喪失と定義したが、その割合は10%弱であった。健康寿命の喪失に関する観察は本研究期間終了後にも継続し、その成果を公表していく予定である。 また、本研究では次年度より介入コホートとして、運動療法を実施した場合の健康寿命の喪失に対する効果を検証する。研究計画では観察期間を18ヶ月と設定していたが、この期間において実際に健康寿命を喪失した患者の割合から介入効果を明らかにするのは容易ではないと推察される。身体機能、動作能力、日常生活活動動作などの変化を副次アウトカムとし、主要アウトカムである健康寿命の喪失の調査と並行して観察していく。
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Causes of Carryover |
物品費として計上した活動量計が計画段階の機種から変更があり単価が抑えられたことと専用解析ソフトウェアの購入をする必要がなくなったことで次年度使用額が生じた。 次年度、活動量計の追加購入が必要となるためそちらの物品購入へと充てる。また、国際雑誌への論文投稿を増やし、論文校閲料へ充てる計画である。
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