2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13109
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology |
Principal Investigator |
柴田 芳幸 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 准教授 (50614319)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 両大腿義足 / 両下肢長可変 / 斜面横断 / 空気バネ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、空気バネを用いた両大腿義足長可変装置を開発することを目的とする。大腿切断者は膝関節を失ってしまうため、大腿義足による歩行では、膝を曲げながら体重を支えなければならない場面での動作が非常に難しい。さらに両側大腿切断者の場合、健側がないため両下肢の長さが常に一定となり、特に低活動レベルの切断者では傾斜地を横断するときなど、平地以外の歩行が困難で転倒の危険を伴ってしまう。よって本研究では、義足の長さを変化させることのできる装置の開発を行っている。長さの変化を発生する機構部には、空気バネを用いるものとした。空気バネは収縮方向に対し強い反力を持たせることが可能であり、空気バネに加える圧力を弱くすることで収縮量が大きくなる。空気バネは構造的に伸長させることができない。本装置では、シリンダー状のガイドレールに空気バネを取り付け、空気バネを収縮させることで下肢の長さを変化させる機構を開発している。これまでの研究により、健常者の両側の足関節、膝関節を固定して股関節のみの運動による、いわゆるぶん回し歩行に制限させるための長下肢装具を作成した。この長下肢装具の足裏部に空気バネを用いた長さ変化装置を取り付け、左右の下肢の長さに差を生じさせるものとした。また、我々の生活環境では、歩道から車道へ通じる道や学校校舎内の坂など、3~5%程度の勾配を持つ斜面が多かったため、同様の勾配を設定できる歩行路を現在製作中である。この歩行路と3次元動作解析装置、床反力計を組み合わせた歩行実験を行い、歩きにくさの評価や転倒モーメントの推定を予定している。この実験により、どれほど左右の下肢の長さに差を生じさせると安定した斜面横断が行えるか、または不安定な歩行になってしまうのかを考察・検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究に取り掛かった当初は、両大腿義足利用者の両下肢長可変装置を、ひとつめの試作品から既存の大腿義足に取り付けられるように設計・製作しようと考えていた。しかし、試作品をいきなり義足に組み込み、利用者の体重が試作品にかかった状態で、しかも傾斜面を横断歩行するような実験は破損・転倒の危険が伴い、その危険性を払拭できなかったため健常者による模擬歩行実験を行う方向へ研究計画を切り替えた。よって本研究の二年目は、健常者を模擬的に両大腿義足利用者と同じ下肢の自由度に制限させるための長下肢装具を製作するところから再スタートした。この装具は、股関節に可動軸を持ち、膝関節と足関節は固定できるように設計・製作した製作は研究代表者が所属する東京都立産業技術高等専門学校の4年生とともに行った。義肢装具士や義肢装具製作会社に製作依頼をせず、長下肢装具のフレームや半月など、アルミの材料を用いてすべて自作したため想定より時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
空気バネの制御方法については、これまでの研究により電空レギュレータ(ITV-2000シリーズ、SMC)の設定圧力と、回転型ポテンショメータの出力電圧を比例制御させた簡易的なコントローラを製作した。入出力信号の処理にはArduinoマイコンを使用した。これにより、ポテンショメータ手元で操作すると空気バネに加える圧力を任意に増減させることができる。本研究の主題である両下肢長可変装置の開発については、前項で述べたように、試作した装置による実験を先に健常者で行うことにしたため、健常者の足関節、膝関節を固定し、ぶん回し歩行を行わせるための長下肢装具を新たに製作した。研究の最終年となる2019年度は、この装具の足裏に空気バネを用いた長さ可変装置を取り付け、さらにその下側にSACH足を接続した模擬義足を製作する予定である。また、現在4%の勾配を持つ斜面横断用歩行路を製作中であり、製作予定の模擬義足と斜面横断用歩行路を用いて三次元動作解析装置と床反力計による歩行計測実験を行い、下肢長を可変することで転倒モーメントを減少させることできるか解析・検討を行う。最終的に、4%以外(3%、5%など)の勾配を持つ斜面も製作し、下肢長を両側でどれだけ差をつければ安定して安全な歩行が実現するか調査を行う。本研究は、科研費による助成が終了した後も、東京都立産業技術高等専門学校の卒業研究テーマの一つとして継続していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画を大幅に見直したことにより、当初計画していた義足の部品購入を見送ったため。また、研究に関係するすべての試作品を内製で行ったため開発費用を大幅に削減した。
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