2017 Fiscal Year Research-status Report
簡便かつ非侵襲的な神経活動修飾による運動機能改善の試み
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17K13112
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 剣人 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (80735457)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 静磁場 / 一次運動野 / 力調節 / 脊髄 |
Outline of Annual Research Achievements |
非侵襲的な脳刺激の一種として近年用いられている静磁場刺激は皮質興奮性や感覚機能を変調させることが報告されているが、運動行動を変調させたという報告はない。本年度は静磁場刺激が運動行動に与える影響について検討する実験を行った。実験は両手での把持力調節課題である。最大筋力の20%の力を目標として、視覚フィードバックなしで、左右の手交互に力発揮を行ってもらった。その最中に、介入を行い、力調節課題の成績の変化を調べた。介入は、左右の一次運動野上に同サイズのネオジム磁石あるいはシャム刺激としてのステンレスを15分間置いた。左右どちらに磁石あるいはステンレスを置くかは被験者によってランダマイズした。発揮した力の平均値は条件間で差が見られなかった。しかしながら、目標値からの絶対誤差を計算すると、介入中、介入後において静磁場をかけた側のほうがシャム側よりも誤差が大きくなった。また、静磁場側の絶対誤差は、介入前よりも有意に大きくなった。この結果は、一次運動野への静磁場刺激によって、力調節の正確性が阻害されたことを示唆している。 また、静磁場刺激を頚髄上の皮膚表面に行うことで、皮質脊髄路の興奮性が低下することを示した論文がClinical Neurophysiology Practice 誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
静磁場刺激がヒトの運動機能に及ぼす影響について実験を行い、一次運動野に静磁場刺激を与えることで、最大下の力調節機能を変調させることに成功した。力発揮の強さそのものではなく、正確性が低下したことから、出力機能よりも、知覚や運動指令を作る機能に作用したものと思われ、静磁場刺激の効果について新たな知見を提供することができた。 また、静磁場刺激を脊髄に与えることで脊髄神経回路の興奮性を低下させる可能性についてまとめた論文が掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたデータから論文掲載を目指す。また、今年度得られた静磁場刺激が運動課題に与える影響について、課題特異的なのかどうかを調べる。また、静磁場刺激が神経障害患者の症状を緩和させるためのツールとなりうるかどうかを調べる予備実験も行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
フォースセンサーの選定・セットアップに予想以上に時間がかかり、実験実施が遅れたことにより、年度内に論文化のための英文校正費・掲載費を必要としなかった。次年度で論文化させることで繰越分を使用させる予定である。
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