2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13115
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
木村 岳裕 高知工科大学, 総合研究所, 助教 (50632254)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経頭蓋磁気刺激 / 運動誘発電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
物を手に取る動作は、”つかみ動作”や”つまみ動作”があり、これらの動作は粗大運動と巧緻運動に分類されている。サルやヒトを対象とした研究から、それぞれの動作を成すために貢献している神経系は異なることが明らかにされており、近年多くの知見が得られている。しかし、粗大運動と巧緻運動は連続して動作を構成することも多いが、これらを調整する脳内の神経機能は明らかにされていない。大脳皮質の機能を調査する方法の1つに、非侵襲的な脳刺激法である経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation; TMS)があり、ヒトの運動機能を始め、幅広く使用されている。本研究では、TMSを用いて、粗大-巧緻運動を支える一次運動野内の神経機能を明らかにすることを目的とする。
運動時の一次運動野内の連携を調査する方法として、運動に連動させたTMSを一次運動野に与え、誘発される筋収縮(運動誘発電位(Motor Evoked Potential; MEP))を筋電図で計測をした。筋電図電極は上腕二頭筋、上腕三頭筋、橈側手根屈筋、橈側手根伸筋、第一背側骨間筋、短母指外転筋、小指屈筋の7箇所に装着し、運動課題として肘関節の屈曲を課した。運動から200-300ms後のTMSから得られた第一背側骨間筋と短母指外転筋のMEPは有意に減少し、小指外転筋におけるMEPは運動直後の増加は確認されたが、減少は確認されなかった。この結果は肘関節の運動が筋特異的かつ時間特異的な抑制が手指において生じていることを示唆するものである。また、この抑制作用の起源を調査するために、尺骨神経を電気刺激することで誘発できるF波を同様の手続きで計測した。その結果、脊髄における抑制作用は確認できなかったため、脊髄上レベルでの神経作用であることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一次運動野には体部位局在性があり、頭頂から側頭にかけて、上腕、前腕、手指の配置をしている。上腕の支配領域には上腕を制御する神経細胞以外にも前腕や手指を制御する神経細胞も存在している。この構成は前腕や手指の支配領域においても同様である。本研究の目的である一次運動野内の神経機能を明らかにするために、TMSを一次運動野内の特定箇所だけでなく、上腕、前腕、手指それぞれの支配領域においてTMSを与え、MEPを計測することで、特定の筋肉を制御する神経細胞の解剖学的な配置と機能差を検証することができる。 適切な計測範囲を検証するために、一次運動野の手指支配領域を中心とした1cm毎の7×7と5×5のグリッドを被験者頭部に想定し、TMSマッピングとして単発のTMSを与えMEPを計測した。7×7の計測では49箇所からMEPを計測することになり、実験参加時間が長くなり被験者への負担が生じる可能性があり、5×5の25箇所におけるTMSマッピングを採用することにした。この計測条件で、運動課題と連動させたTMSを実施し、これまでに確認した運動課題による抑制作用が一次運動野内で、どのような特性を示すのかを調査可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度で確定したTMSマッピングの手続きで、肘関節運動による一次運動野の抑制作用の機能特性を調査する。特に注目をするのは第一背側骨間筋と短母指外転筋からのMEPであり、一次運動野内の上腕支配領域と手指支配領域における抑制作用の差異を確認する。 神経生理学的な検証以外にも、抑制作用と行動指標の関係も調査する。抑制作用は個人間で多寡があり、抑制量の個人差と運動課題の成績(行動指標)の相関関係や、肘関節と手指を用いた運動学習課題が抑制作用にどのように影響するかを調査することで、ヒトの動作における意義を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、機器購入費が予定よりも抑えられたためである。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画は、計測に関わる消耗品の購入、実験協力者への謝金に充てる。
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Research Products
(2 results)