2017 Fiscal Year Research-status Report
身体教育をめぐる日本的心性の基盤形成:幕末明治期の渡邊昇と藤田東湖の武術思想
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17K13120
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
田端 真弓 大分大学, 教育学部, 准教授 (60648608)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 剣術 / 大村藩 / 渡邊昇 / 大日本武徳会 / 国家主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は身体教育の表層と日本人の内面に着目して、幕末大村藩士渡邊昇(以下昇とする)と幕末水戸藩士藤田東湖の武術思想の検討を主たる目的とするもので、日本的メンタリティを明らかにするものとして位置づく。代表者はこれまでの研究の経過から、すでに昇に関する一部の史資料を収集してきているが、それは彼の経歴に関するものであったり、また幕末期に関する資料であったりと断片的なものにとどまっていた。そこで、平成29年度は主に昇の幕末明治期の経歴を整理し、さらに明治期関連史資料の収集にあたること、そしてそれらの史資料から思想の構造を把握することを計画としてあげていた。これらの計画に対して、一定程度の資料収集を終え、資料内容の抽象的な把握には到達したが、具体的な内容の検討には至らなかった。しかし、この過程においては、当初想定していなかった角度からの検討が必要になることが明らかになり、それは本研究にとって貴重な成果となった。また、計画通りに昇の経歴を武術界、政治界に分類して整理したことにより彼の生涯の全体像が明らかにされ、そこから生じた問題意識から彼が生きた時代の社会状況、例えば、当該時代の思想構造的側面からの体育・スポーツの把握、思想的側面からの武術、武道(主として大日本武徳会)の動向、明治期における国家主義などの把握に着手することができた。これによって、彼の位置づけと把握をめぐる研究方法は今後精緻なものとなると考えている。これらの研究状況から、当初研究の計画段階で予想されていた昇の思想、位置づけは、総括的に考えれば再検討、再考されるべきことが明確になってきた点でこれまでにない進展があったと捉えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で示したように、当初の計画であった史資料を一定程度入手することや昇の経歴を整理することができ、当初予定していなかった構想が見出された点である程度の達成がみられた。しかし、研究の経過や史料館の事情などによって一部の史資料については未入手のままになっていること、その検討が遅れている点においては計画通りであったとは言い難い。一方で、研究の経過から当該年度以降の着手を予定していた検討に入り、当該年度の計画と同時並行で進められた点で、平成29年度については「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに「研究実績の概要」と「進捗状況」で示したように、収集を終えていない史資料があるため、まずそれらの入手に努めたい。今後は、結果的に前倒しで進めることとなった社会状況の把握に関する検討を継続し、昇の社会的位置の確認していきたい。その把握こそが、平成29年度の研究実績を発展させ、研究成果に到達させるものと考えている。 さらに、上述のような細部にわたる研究の内容を確認しながら、総括的観点から研究の全体構想と研究の方向性を再検討していくことが平成30年度以降の最大の課題となる。
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