2017 Fiscal Year Research-status Report
富士山の地形的メリットを活かしたトレイルランナーの低酸素運動時の生体応答の探求
Project/Area Number |
17K13123
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
辻川 比呂斗 順天堂大学, 保健看護学部, 准教授 (10348980)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 富士山フィールド実験 / 低圧低酸素 / 呼吸循環応答 / 抗酸化能 / 山岳レース / 体重支持指数 / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
西暦2000年前後より、マラソンおよび登山ブームの相乗効果から、トレイルランニングやスカイランニングと呼ばれる未舗装の山岳レースに注目が集まっている。スカイランニングとは、「山を駆け上る、または傾斜30%を超え2000m標高以上で登攀難易度Ⅱ級を超えない範囲でのランニング競技。」(日本スカイランニング協会)とされている。これら山岳レースは、シティマラソンとは異なり、山岳地帯を走行するため、脱水のみならず、高山病や低体温症などのリスクが高いと考えられる(奥井 2015)が、これら山岳レースに関する研究は世界的にも少なく、基礎的なデータを積み重ねる時期であると言える。 本研究課題は①スカイランニングが生体に及ぼす影響を明らかにし、また一流スカイランナーの身体的・心理的特性を検証し、非鍛錬者と比較・検討すること、②鍛錬者と非鍛錬者における標高の違いが安静時および運動時の生体応答に及ぼす影響について検討することを目的としている。具体的には、(1)富士山の開山期間において、標高1,500 mから標高3,000 m(もしくは山頂)の往復タイムアタックの前後における体力指標、タイムアタック中の心拍応答、GPS記録、血液成分を分析し、酸化ストレスマーカーや高地順化パラメーターの変動を明らかにする。(2) ランナーの身体・心理的特性を明らかにし、種目適正の選択基準を探る。(3) 鍛錬者および非鍛錬者を対象に、標高の違いが生理的応答に及ぼす影響について把握する。 トップの山岳ランナーは、身体的な特性が極端に優れているわけではなく、気温や酸素濃度の外環境の変化(外乱)に対して、内部環境の維持(ホメオスタシス)に優れている可能性が予想される。その強みを把握出来ることで、一般成人が同様の環境におかれた際に気をつけるべき装備や対応についての医科学的論拠を集積していくことは、大変意義の有ることと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、富士山タイムアタックに9名のランナーが参加し、そのうち4名が山頂、5名が赤岩8号館(標高3200 m)までの往復走を実施した。このデータについては、解析を進めつつ、平成29年度御殿場市調査研究報告会にて内容報告をした。フィールド実験かつ、国内ランカーの任意の参加のため、今後も継続してデータを蓄積していきたい。 また、鍛錬者・非鍛錬者における低酸素に対する生体応答についても、8名の協力を得て、海抜0 m~標高2,000 mまで500 m毎、ステップ運動を実施した際の呼吸循環応答を計測することが出来た。こちらについては、健康長寿フォーラム2017(静岡市)、第95回日本生理学会(高松市)にて報告した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、タイムアタック前後の体力測定の際、体重支持指数(WBI)を簡易法である立ち上がりテストを用いて実施した。しかしながら、低体力者のスクリーニングである立ち上がりテストでは、タイムアタック前後の正確な脚筋力を測定することは出来ない。そこで、29年度に科研費の独立基盤形成支援により、より正確に大腿四頭筋および二頭筋の筋力測定が可能なCB-2(ミナト医科学 社製)を導入することが可能となり、平成30年度以降の実験では、現地に運び込みより詳細なデータを測定する予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度、計画が概ね順調に進み、次年度移行に計画していた標高の違いについての研究を前倒しで行ったため、外注予定であった血液検査等の分を30万円分前倒し請求していた。その分、僅かながら残額が生じたが、次年度移行の計画として大きな問題はない。
|
Research Products
(3 results)