2019 Fiscal Year Research-status Report
A study of martial art thought using anthropological method: Case study of Shinkage-ryu
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17K13133
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中嶋 哲也 茨城大学, 教育学部, 准教授 (30613921)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 形稽古 / 刀法 / 源了圓 / 新陰流 / 砕き / 非切り / 表太刀 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、平成30年度に引き続き新陰流道場のフィールドワークから日本の古流剣術の形稽古の実施形態について再考する研究を行った。すなわち、現代武道のようにあらかじめ設定された手順を正確に踏むことが古流の形稽古の目的だったのかどうかを再検討したのである。結果的には、平成30年度同様、新陰流には砕きと非切り(間切り)という稽古法が存在した。砕きは柳生流の流祖柳生宗厳の作成した伝書にもみられる用語で、これは刀法(動き方の要点。相手の太刀が当たる間合いに踏み込んでいくこと、一拍子(ワン・モーション)で竹刀を振る事、相手の太刀筋を捌くように太刀筋を使うこと)に基づく限りで相手と自由に攻防する稽古として伝承されている。いわば現代武道における試合稽古と形稽古を混合したような稽古法である。また非切りは18世紀の尾張柳生家八代柳生厳春の作成した伝書『陰流書』に登場する。これは、普段の形の稽古において、仕太刀の刀法に不十分な点があった場合、それを指摘するために打太刀が反撃する稽古である。これによって、仕太刀の刀法を洗練していくのであるが、これも現代武道の形稽古にはみられない実施形態である。こうしたことから、少なくとも形稽古の在り様に関して、文献学者(歴史学者)はこれまでの形の理解を一旦、保留しなければならず、さらに各流派における普段の稽古の在り様をフィールドワークすることで、より各流派が遺してきた古文献(伝書等)の内容は精緻に読解できる可能性が拓かれた。なお、これらの知見は令和2年1月、日本体育学会編『体育学研究』65巻に原著論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来、令和元年度の研究成果は平成30年度に提出している予定であった。今年度以降は古流剣術の道場で当該流派の伝書がどのように読まれているのか、その読解方法について明らかにし、そこから彼らが稽古の一環として行っている過去の形を復元するという稽古の方法を武道の技術史の研究手法へと洗練するてがかりにする予定であった。しかし、それが一年ズレて、今年度からこの古流剣術の稽古者の立場から伝書がいかに読まれ、形は復元されるのか、そしてその復元方法を手がかりに、武道の技術史の手法を確立する研究に着手することになった。本来であれば、今年度には新陰流の極意「轉」の意味を哲学・人類学的に考察するはずであったが、今後、到達に向けて研究を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上記に記した通り、研究計画が一年遅れたので、まずは令和元年度に計画していた、稽古者による伝書の読解方法と形の復元方法の研究に着手する。その後、時間が許す限り、新陰流の極意「轉」について、それがなぜ極意の刀法として実践されているのか、その実践から稽古者は何を学び取っていくのかという本質論的な研究に取り組みたい。
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Research Products
(1 results)