2018 Fiscal Year Research-status Report
剣道における打突の評価と「踏み込み音」に関する研究
Project/Area Number |
17K13140
|
Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
下川 美佳 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 助教 (10437981)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 踏み込み音 / 周波数帯 / 音の強さ / 踏み込み方 / 音量 |
Outline of Annual Research Achievements |
剣道において打突に伴う動作と音は、打突の評価において重要である。しかし、音に関する知見は少なく、特に踏み込み音に関しては十分明らかではない。そこで、本研究では、打突評価と「踏み込み音」の特徴を探り、現場に還元できる資料の提示を目指す。これにより、競技者が踏み込み技術を見直す新たなアプローチ方法の提案が可能になり、総合的な打突技術の向上が期待される。 平成30年度は、打突動作に伴って発生する音に関する実験を行なった。(1)打突音と踏み込みおよびそれらの複合音の特性、(2)踏み込み音の違いが打突における冴えや強度の評価に及ぼす影響の2点について検討した。 (1)は大学女子剣道競技者6名を対象に、3種類の対象動作により、打突音と踏み込み音が複合音(打突音+踏み込み音)に与える影響を検討した。なお、平成29年度で実験的に調査した方法を基に対象者を増やし実施した。これにより、打突音は踏み込み音と複合音より音が弱いことが明らかとなった。また、打突音と踏み込み音および複合音では、構成する周波数帯の振幅スペクトル量が異なることが示唆された。一方で、踏み込み音と複合音は構成する周波数帯も音の強さも異ならないことが明らかとなった。以上のことから、複合音を構成する音は、踏み込み音の影響を受けるとの知見が得られた。 (2)は、剣道における踏み込み音の違いが打突の冴えや強度の評価に及ぼす影響を検討した。そのために、映像資料を作成し、剣道の高段者21名を対象に一対比較法による評価テストを実施した。これにより、異なる踏み込み方による音の違いおよびその音量は、冴えや強度の評価に影響を及ぼすことが明らかとなった。以上のことから、打突の冴えや強度の聴覚的な判断において、打突音に踏み込み音が加わることで、良い評価を受け、その踏み込み音は、足裏全体で床に接地する踏み込み方による音が好ましいとの知見が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、計画1として、大学生剣道競技者1名を対象に、打突音や踏み込み音およびそれらの複合音(打突音+踏み込み音)に関する実験を実施した。 平成30年度は、計画2として、打突の評価と踏み込み音の関係性を検討するための実験を実施した。この実験は、映像資料を用いて剣道の高段者21名を対象に一対比較法による評価テストを行うものであった。 結果は、上述の通り、異なる踏み込み方による音の違いおよびその音量は、冴えや強度の評価に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、打突の冴えや強度の聴覚的な判断において、打突音に踏み込み音が加わることで、良い評価を受け、その踏み込み音は、足裏全体で床に接地する踏み込み方による音が好ましいことが示唆された。これらの結果は、打突の評価と踏み込み音の関係性を示す唯一の知見であり、踏み込み音に着目し、競技者が踏み込み技術を見直す手がかりになるものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度(2019年度)は、計画3として剣道の打突評価向上を目指した取り組み事例の提示を試みる。当初の計画では、対象動作を突き技と小手技の2試技としていたが、実験の危険性を考慮する必要がある。したがって、以下の通り、研究計画を変更する。 対象者は1名とし、踏み込み方を変更するための介入を行う。そして、介入前後の小手打突の評価、踏み込み音、複合音(打突音+踏み込み音)、動作について検討する。なお、小手打突を評価する者は剣道高段者とする。 本計画3は、計画1(踏み込み音は複合音に影響を及ぼす)と計画2(異なる踏み込み音は打突の評価に影響を及ぼす)の知見を活用する実践事例と考えられ、現場への直接的な還元が期待できる。
|
Research Products
(2 results)