2017 Fiscal Year Research-status Report
疾走能力の間接的評価指標となる下肢関節屈曲トルク・パワー計測システムの開発
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17K13141
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
永原 隆 鹿屋体育大学, その他, 特任助教 (80755372)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 慣性センサ / 疾走能力 / 関節トルク / パワー / 体力テスト / 筋力評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,下肢関節のバリスティックな屈曲筋力・パワー発揮能力の簡便な評価システム(以下,本システム)を開発し,その測定値の信頼性・妥当性,疾走能力の間接的評価への有効性を検証することを目的としている. 平成29年度は,無線式慣性センサによって簡便に関節トルク・パワーを計測し,即時にフィードバックできるシステムを開発した.システムは9軸の無線式慣性センサユニット(スポーツセンシング社製)を用い,得られたクォータニオンからオイラー角を算出し,下腿や下肢全体の角度,角速度とともに,身体部分長から推定した身体部分慣性係数を入力することで関節トルク・パワーを算出するものである.開発後,本システムから得られるトルク・パワーの値に関する信頼性,妥当性について男子大学生3名を対象とした実験を行った.実験では,股関節,膝関節の屈曲トルク・パワーテストを複数の努力度で行わせ,本システムと三次元動作計測装置で同時に計測し,本研究のシステムから取得した関節トルク・パワーの値とマーカ座標から算出した値を比較した.その結果,本研究で開発したシステムから得られる測定値の信頼性,妥当性が証明された.また,本システムの妥当性検証後,本システムで計測したトルク・パワーが疾走能力の間接的評価指標となるのかについて検証実験を行った.実験では,19名の男子大学生に50mの全力走を行わせ,本システムにより股関節,膝関節の屈曲トルク・パワーを評価した.その結果,膝関節,股関節の屈曲パワーが疾走パフォーマンスと有意に関係することがわかり,本システムによる疾走パフォーマンス評価の有効性が示された. 本システムにより,従来簡便に評価することができなかった下肢関節の屈曲パワー発揮能力がスポーツフィールドで簡便に計測できるようになった.このシステムは,トレーニング状況のモニタリングやコンディション評価に生かされることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下肢関節のバリスティックな屈曲筋力・パワー発揮能力の簡便な評価システムに関して,インターフェースに改善点はあるが,当初計画通りに開発できた.また,開発した評価システムによる測定値の妥当性検証については,今後対象者を増やす必要性があるものの,これまでの実験で測定値の妥当性が証明された.さらに,次年度計画の一部を先取りして本研究の評価システムによる疾走パフォーマンスの間接的評価について検証することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では,本研究のシステムによる測定値の妥当性検証について対象者を10名程度まで増やす.また妥当性の検証と並行して使いやすいユーザーインターフェースにシステムを改善する.その後,本研究のシステムによって計測した股関節,膝関節の屈曲トルク・パワーと,ダイナモメータで計測した股関節・膝関節屈曲トルク・パワーの値を比較し,本研究のシステムが既存の股関節,膝関節屈曲筋力測定装置とは異なる特性の屈曲力・パワーを評価できることを証明する.実験では,本研究で開発したシステムを用いて,様々な条件(予備実験で検討)における股関節,膝関節の屈曲トルク・パワー(ピーク値,立ち上がり,反動有無による値の比率など)を計測し,ダイナモメータによって計測した値との関係について検討する. 次に,本研究のシステムで計測した股関節,膝関節屈曲トルク・パワーが疾走パフォーマンスの間接的評価指標として有効であるか詳細に検証する.実験では,スプリンターに60mの全力走を行わせ,走路に埋設された54枚のフォースプレートによってスタートから50m地点までの連続した時空間変数や地面反力を計測する.そして,本研究のシステムで計測した下肢関節屈曲トルク・パワーの値が,加速疾走のどの区間(スタートや加速中盤など)で関係するのか詳細に明らかにする.下肢関節屈曲トルク・パワーのテスト条件は,各関節6種類(反動の有無,予備緊張条件,錘の有無等)を予定し,どの条件のテストが加速疾走の評価に最も有効かについても検証する. 本研究の各課題を遂行することで,疾走能力を下肢関節の屈曲筋力・パワーから間接的に評価するための簡便なテストプログラムを提案する.
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Causes of Carryover |
下肢関節のバリスティックな屈曲筋力・パワー発揮能力の簡便な評価システムの開発に関して,一部を自主制作したため次年度使用額が生じた.これについては,30年度におけるインターフェースの改善とプラットフォームのバージョンアップの費用として使用予定である.また,妥当性検証実験の対象者が少なかったため謝金の所要額が少なかったが,30年度に当初計画通り使用する.
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Research Products
(4 results)