台湾に伝えられた日本泳法

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 17K13159
• Research Institution: Kanazawa Gakuin University
• Principal Investigator: 山脇 あゆみ 金沢学院大学, 人間健康学部, 講師 (60611085)
• Project Period (FY): 2017-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: 日本泳法 / 台湾 / 水泳 / 日本統治期台湾

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、日本独自の水泳術として継承されてきた「日本泳法」が、他のスポーツと同様に、実は時代と地域の中で様々な変容を繰り返し、現代に伝えられてきたのではないかという仮定から着想に至った研究である。
本研究は、1920年～1945年の台湾における日本泳法の展開について整理するとともに、泳法の変容過程をスポーツ史の立場から明らかにすることを主な目的としている。これまでの調査で、台湾全域の1920年～1945年の資料：新聞記事・教育関係雑誌・水泳関連雑誌を入手し、情報の整理・分析に加え、研究成果の執筆を行ってきた。その結果、2019年度には1927年までの研究成果を報告し、2020年度には1937年までの調査を概ね完了することができた。
これまでの研究成果は次のとおりである。
1907年以降、組織的に指導され、広められた日本泳法は、1920年頃に日本泳法研究会が組織されるなど、徐々に広がりをみせたが、1923年を境に台湾において水泳が全土展開されるようになったことに伴って徐々に衰退を見せ始めた。そんな中、1927年には学校教育に水泳が導入され、一部の学校教育で日本泳法が実施された。しかしながら、水泳大会等のイベントには日本泳法が実施された形跡はなく、台湾における日本泳法は極めて一部で展開されていたと考えられる。また、戦時体制下以降の資料をみると、日本泳法の技術を用いた水術がみられるものの、流派等の概念を有した日本泳法が実施されたとは考えにくい。
現在は、本研究の総括となる報告の執筆を進めているところである。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

台湾への渡航計画が当初の予定通りに進まず、資料収集に大幅な遅れが生じたことによって研究の進行自体に影響が生じた。具体的には、2017年の台風による渡航中止及び、2020年から現在までのコロナウイルス感染拡大による海外渡航禁止によるものである。
2020年度は、オンラインでの資料収集及び現地研究者との連携を図りながら研究を進めたが、執筆完了にまでは至らず、今年度は執筆の完了と学会での研究成果報告を計画している。

Strategy for Future Research Activity

資料収集は完了しており、分析も大よそ完了していることから、今年度の主な作業は執筆及び学会等での成果報告である。
1920年以降、1945年までの台湾における日本泳法について時系列を整理し、日本泳法が台湾の水泳史に与えた影響について言及したい。当初の計画からみると、研究に大幅な遅れが出ているが、科研費の延長のはからいやオンライン環境の充実によって着実に成果を重ねられていることから、当初の研究計画を達成できる見通しである。

Causes of Carryover

2020年から続く、コロナウイルス感染拡大に伴う海外渡航禁止による研究遅延が原因である。コロナ禍の影響で、台湾への渡航がかなわず、現地研究者との研究打ち合わせ・資料収集・資料分析に大幅な遅れが生じた。現地に行かなければ閲覧不可能な資料等も多く、資料の収集分析に当初予定していた2倍程度の時間を要した。2020年度に高性能パソコンを購入し、オンラインを活用することによって資料収集は再開できたが、現地の研究者との連携が必須であったため、執筆完了に至ることができなかった。
また、2020年度に成果報告の予定をしていた学会が不開催となったことで研究発表報告ができなかった。次年度延長を希望したのは、研究成果の報告を実施したいと考えたためである。コロナウイルスの感染拡大はまだ収束をみていないため、今年度はオンラインによる成果報告が中心となると思われるが、本年度は、執筆完了に併せてと成果報告を積極的に行っていく予定である。