2019 Fiscal Year Research-status Report
Bioimaging of metabolite transported between muscle cells by contraction.
Project/Area Number |
17K13184
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
田中 嘉法 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 研究員 (40791249)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 乳酸 / 細胞内pH / in vivoイメージング / 筋疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年では,代謝産物の一つである「乳酸」は筋疲労時に疲労を助長するのではなく,疲労の軽減に寄与していると考えられるようになってきた.そこで,本研究では,「乳酸」及び乳酸に伴い細胞内外へ輸送されるH+に焦点を当て研究を実施している.前年度において,Wistar系雄性ラットの脊柱僧帽筋を用いて持久性収縮中における乳酸の効果を検証し,20 mMの乳酸溶液を負荷した場合,筋収縮時の筋発揮張力が有意に維持されることを示した.乳酸負荷実験では,仮説として,乳酸塩が細胞間及び細胞内内乳酸シャトル (Brooks, 1998) によって細胞内に取り込まれることでエネルギー基質として作用していると考えた.そこで,本年度では,乳酸が取り込まれエネルギー物質として寄与しているのかを検証するために,乳酸の光学異性体を用いて乳酸が筋発揮張力に寄与する機構を検証した.その結果,20 mMのL-乳酸塩を負荷した群と同濃度の光学異性体乳酸であるD-乳酸塩を負荷した群では,収縮期間中の筋発揮張力の変化に有意な差は観察されなかった.このことから,乳酸は細胞内に取り込まれ,エネルギー物質として筋発揮張力の維持に寄与しているのではなく,他の機構により筋発揮張力の維持に寄与している可能性を示した.この実験結果は,2019年9月に行われた日本体力医学会で発表を行った. 今後は,乳酸塩がどのような機構で筋発揮張力の維持に寄与しているのかを検証する必要がある.一つの候補として,Nielsen et al., (2001) は,乳酸塩が細胞膜の膜電位に作用していると示唆していることから,その点に着目して検証を進める必要があると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度から乳酸を観察するために新規乳酸感受性蛍光タンパク質を観察筋である脊柱僧帽筋に導入する方法を試みていた.前年度では,筋に蛍光タンパク質を導入するにあたって,筋の損傷が激しいこと,発現率が低いことが問題であった.そのため,収縮負荷における乳酸の効果の実験と並行して,蛍光タンパク質の発現モデルの作成方法の確立を今年度は目指してきた.様々な方法を検討しているものの,未だに損傷を抑えながら発現率を高くさせる方法の確立には至っていない. また,本年度において研究結果をまとめた論文を執筆する予定であったが,補足データの取得の必要性が出たために,実験の進行に遅延が生じてしまった.
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光タンパク質発現のモデルにおいては,前年度から損傷率を低下させ,発現率を向上させる方法を確立できていなかった.そのため,来年度においては,遺伝子導入に広く使われている新規エレクトロポレーターの利用を検討している.このエレクトロポレーターを用いることで,損傷率を抑え,発現率を向上させるモデルの構築を確立したい. 乳酸の効果を検証した実験では,乳酸の効果は,細胞外の乳酸が細胞内でエネルギー物質として機能することで筋発揮張力を維持させるという可能性が低いことが示された.そのため,もうひとつの仮説である膜電位の維持に乳酸が寄与しているとする仮説を検証する. これらの研究を行いながら,本年度内の論文公表を予定する.
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Causes of Carryover |
当初計画された実験を遂行した結果,蛍光タンパク質の導入の段階において,筋損傷が生じていることが確認された.この損傷を抑制するモデルが必要であったため,様々なプロトコールによる実験を重ねて,最適化されたモデルの確立を試みた.ところが,現行のエレクトロポレーターでは,それを達成できなかった.このモデル検証に多くの時間を費やしたため,予定されていた実験を次年度へ繰り越すことにした.次年度は,新規のエレクトロポレーターの利用に目処がついたため,速やかに,遺伝子導入モデルを確立し,予定されている実験を遂行する予定である.
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