2017 Fiscal Year Research-status Report
骨格筋微小循環制御の解明-二光子レーザー顕微鏡によるアプローチ-
Project/Area Number |
17K13185
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
堀田 一樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, UECポスドク (30791248)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 2光子レーザー走査型顕微鏡 / 骨格筋 / 微小循環 / 血管内皮 / 筋損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2光子レーザー走査型顕微鏡(two-photon laser scanning microscopy; TPLSM)を用い,骨格筋微小循環を可視化することで,血流速度および血管透過性を定量的に評価することを目的としていた.そこで,血管内に蛍光物質を投与することで血管内の輝度値の時間的・空間的変化から血流速度のマッピングを試した(課題1, 3).TPLSMによりラット前脛骨筋(tibialis anterior; TA)の微小循環を深さ300μmまで可視化できたが,アーチファクトにより妥当性のある血流速度の画像解析が困難であった.骨格筋微小血管の透過性の評価法の確立(課題2)については,血管内に投与された蛍光物質の血管外への漏出をTPLSMを用いて観察する実験系を確立できた.さらに,画像解析ソフトウェアを用いて血管外に漏出した蛍光物質の容積を定量化した.得られた血管外漏出容積の妥当性については,運動誘発性筋損傷モデルを用いた検討(課題4)で以下の通り確認した.筋損傷が顕著であった運動負荷後1日あるいは3日目における血管外漏出容積は,コントロール(運動負荷なし)と比較して有意に高値を示した.一方,筋再生が生じ始める運動負荷後7日目においては血管外漏出容積はコントロールと同程度まで回復していた.また,TPLSMで得られた微小血管3次元画像を画像解析ソフトウェアを用いて血管径,分岐枝数,湾曲率を評価する方法を確立し,損傷筋では血管径は変化しないが湾曲率が増加することを示した.以上のことから,TPLSMは骨格筋微小血管の機能的・構造的特徴の評価に有用と思われた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では課題1と3として2光子レーザー走査型顕微鏡(TPLSM)を用いて骨格筋微小血管の血流速度の定量化を目指したが,画像上のアーチファクトにより妥当性のある血流速度の解析には至らなかった.これはラットの呼吸変動や筋収縮に伴う動きによるアーチファクトと思われた.一方,血管透過性の評価には,血管内に投与した蛍光物質の血管外への漏出をリアルタイムで画像化することに成功した.多くの微小血管(細動脈,毛細血管,細静脈)は筋線維長軸に対して平行に走行しており,蛍光物質は血管から外へと漏出し間質に貯留した.蛍光物質としてrhodamine b isothiocyanate-dextran (分子量 70 kDa) を血管内に投与した.70 kDaと高分子dextranは容易に血管外へ漏出しないが,10 kDaを用いた場合には血管内投与直後(1分以内)に血管外へ漏出した.一方,伸長性筋収縮により筋線維の損傷を惹起した際には、70 kDaの蛍光物質は血管外へと漏出した.特に,筋収縮後1および3日後の血管外漏出容積は運動負荷していないコントロールと比較して有意に高値を示した(5.1±1.4, 5.3±1.2 vs. 0.51±0.14 μm3 x 10^6, それぞれP<0.05, 筋収縮1および3日後 vs. コントロール).ヘマトキシリン・エオジン染色により筋細胞の形態形態を確認したところ,伸長性筋収縮1日後には腫大した筋線維が多く観察され,3日後には白血球の浸潤を受けた細胞を観察した.筋収縮から7日後には中心核を有する細胞サイズの小さな再生筋が観察され,同時期のTPLSMの観察により血管透過性はコントロールと差を認めなかった.以上のことから,TPLSMを用いた骨格筋微小循環のin vivo観察は血管透過性の評価に有用であった.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況についてデータをまとめ,国際誌にて査読審査中である.骨格筋血流評価については,現在蛍光ビーズ(直径 15 μm)の動脈内投与による方法で血流の客観的評価を検討中である.骨格筋微小血管の透過性評価については,本研究で用いた手法を筋損傷モデル以外に適応することを検討中である.特に,運動機能障害が生ずるモデルとして糖尿病,末梢動脈疾患のモデル動物を用いて血管透過性を評価することを検討中である.いずれの疾患モデル動物も既に本研究室で確立済みのモデルであるため,本年度中に血管透過性の評価を行えると想定している.
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Causes of Carryover |
当該年度では主にイメージングに蛍光物質の血管内投与を行った.そのため,消耗品として蛍光物質の購入に予算を使用した.また,イメージングに使用する蛍光フィルターを購入した.一方で,国内学会の旅費は学内予算を使用したこと,また動物(ラット)については他研究者との共有が可能であった.次年度においては,主に消耗品として蛍光物質と,糖尿病モデル作成のための試薬,血流測定に用いる蛍光ビーズを購入し,2光子レーザー走査型顕微鏡を用いたイメージングにより血管透過性だけでなく血流量の定量化を様々な疾患モデルで計画している.
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Research Products
(2 results)