2017 Fiscal Year Research-status Report
降雨と風による身体冷却がヒトの体温・エネルギー代謝に及ぼす影響
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17K13198
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Research Institution | Daido University |
Principal Investigator |
伊藤 僚 大同大学, 教養部, 准教授 (60611118)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 冷環境 / 降雨 / 体温 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は降雨環境が運動中のヒトのエネルギー代謝・体温に及ぼす影響を明らかにするために、降雨と風(2m/sec)を伴う冷環境(10℃)が走運動中のヒトのエネルギー代謝・体温に及ぼす影響を検討することを目的とし、実験を遂行した。実験時の測定項目は直腸温・皮膚温・温熱感覚・酸素摂取量・呼吸交換比・心拍数・主観的運動強度・血中乳酸濃度・血漿ノルエピネフリン濃度・血漿エピネフリン濃度・血中遊離脂肪酸濃度・血中中性脂肪濃度とした。その結果、一般的に冷環境は長時間運動時において過度な体温上昇を防ぐことから運動パフォーマンスに有益であると考えられているが、降雨と風が加わることで、寒冷ストレスが増加し、運動中の一時的な体温低下・酸素摂取量の増加・呼吸交換比の上昇・血中乳酸濃度と血漿ノルエピネフリン濃度の上昇が確認された。このことから、冷環境下であっても、降雨によって全身が濡れ、そこに風を受けることで熱放散量が増加し、寒冷ストレスが高まることが明らかとなった。以上のことから、冷環境下の運動であっても降雨と風を伴う環境では十分な寒冷対策が必要と考えられる。得られた成果は23rd annual Congress of the EUROPEAN COLLEGE OF SPORT SCIENCE及び、日本体育学会第69回大会にて研究発表を行う予定である。 また、日本体育学会第68回大会にて「降雨が走運動中のヒトの体温・エネルギー代謝に及ぼす影響~冷環境下(10℃)に着目して~」の研究発表を行った。複数の研究者、競技指導者から質問を受け、有益な意見交換を行うことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
降雨環境が運動中のヒトのエネルギー代謝・体温に及ぼす影響を明らかにするため、平成29年度は降雨と風(2m/sec)を伴う冷環境(10℃)が走運動中のヒトのエネルギー代謝・体温に及ぼす影響を検討することを目的としていた。実験は被験者8名を対象としており、既に完遂している。実験に使用する機器・器材等に故障や不具合は発生しておらず、平成30年度も引き続き研究を進める。また、成果発表を23rd annual Congress of the EUROPEAN COLLEGE OF SPORT SCIENCEにて行う予定で、発表抄録は採択済である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、交付申請書に記述した通り平成30年度は「降雨をともなった冷環境が低強度運動中のヒトのエネルギー代謝・体温に及ぼす影響」の検討と平成31年度は「降雨をともなった中性温環境が走運動中のヒトのエネルギー代謝・体温に及ぼす影響」を検討し、得られたデータは研究発表及び論文化する予定である。また29年度の研究成果から降雨と風を伴う冷環境では身体冷却を原因とした体温低下、エネルギー消費量の増加に加えて、運動中の糖質利用率が高まる可能性が示された。そのため、今後の実験では被験者に実験遂行前日の食事制限に加え食事内容の統一を行い、エネルギー基質としての糖利用の変化に着目する予定である。
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Causes of Carryover |
実験補助を大学生および大学院生に依頼したが、自らの興味や見聞を得ることを理由に、ボランティアとして参加することを本人達が希望したため、申請していた人件費を抑えることができた。また、平成27年度科学研究費助成事業若手B(課題番号:15k16459)で申請した消耗品が若干残っていたため、本年度の消耗品費を抑えることができた。そこで、平成30年度はダブリンで開催される23rd annual Congress of the EUROPEAN COLLEGE OF SPORT SCIENCEにて成果発表を行う予定だが、外国旅費が申請時の金額と比較して多くかかることが判明したため、次年度使用額の28609円は外国旅費の補填とし、その他は交付申請書の通りの使用とする予定である。
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