2018 Fiscal Year Research-status Report
One-shot LC-MS/MS analysis of post-translational modificiations in crystallin of age-related cataract
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17K13220
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金 仁求 京都大学, 複合原子力科学研究所, 研究員 (90784265)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 加齢性白内障 / LC-MS/MS / 翻訳後修飾 / 水晶体 / D-アミノ酸 / 老化 / 異常凝集 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト眼の水晶体は主成分であるα-,β-,γ-クリスタリン(Cry)間の相互作用によって形成された規則的な会合体によってレンズとしての機能を保持している。白内障は、水晶体中の蛋白質の構造に変化が生じ、秩序構造が乱れ、凝集が進み→異常凝集化→不溶化することに起因する加齢性疾患である。白内障のCry中では酸化、脱アミド化、異性化及び非酵素的糖化など複数の翻訳後修飾が検出されており、これらが凝集のトリガーと考えられている。本研究では、液体クロマトグラフ質量分析法(LC-MS/MS)により酸化、脱アミド化、異性化の迅速解析を行い問題を解決した。また、比較的簡便にAsp異性体を決定する方法を見出した。Asp残基の異性体分析においては主成分であるα-Cry中のAsp残基が4つのAsp異性体が異性化しているために、LC上で分離され多くの部位で異性化部位が検出された。だが、他のCryであるβ-Cryに関してはα-Cryに比べ量が少なく分析が混乱であ報告が少ない。そこで、不溶性画分への移行段階である高分子量(HMW)画分中のβ-Cryの正常な会合体を形成しているnative状態のβ-Cry中のAsp残基の異性化率を比較した結果、10~80代の加齢性白内障水晶体中のHMW画分にはβ-Cryが存在し、そのβ(βB1)画分中Asp212残基の異性化が促進していた。しかし、凝集していないnative状態のβ(βB1)画分中Asp212残基の異性化は見られなかった。このことから、Asp212の異性化がβB1-Cryの凝集化を引き起こしCryの不溶化過程にあるHMW画分へ移行したと考えられた。また、WS画分に加えWI画分に関しても、同様な実験を行った結果、Asp残基の異性化はWS画分のCryよりもWI画分のCryに高い割合で進んでおり、Asp残基の異性化と蛋白質の凝集、不溶化との関連が強く考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クリスタリン中のアスパラギン酸残基の異性体分析はLC-MS/MSで行っているが、最低、1μgの蛋白質が必要である。しかし、試料によっては1μgよりも微量で、分析できないものがあった。クリスタリン中のAsp酸残基の異性体分析をLC-MS/MSで行っているが、最低、1μgの蛋白質が必要である。そこで、問題を克服するためにLC-MS/MS(ion Trap法)でなく、他のLC-MS/MSであるターゲットMRM(multiple reaction monitoring)分析を実施し、従来の1/10-1/50量の試料でも分析可能な方法を検討した。そこで、次年度はこの方法で、多くの試料を分析し、論文投稿を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、2017年度からの研究を継続させ、同時に酸化、脱アミド化、異性化の反応速度定数を算出する。また、白内障とこれら3者の相関関係について考察し、その成果を論文として出版する。 また、試料によっては1μgよりも微量で、分析できないものがあった。水晶体中で比較的に少ないβ-、γ-CryのAsp残基の異性体分析においては主成分であるα-Cryほど満足できる結果が得られなかった。複雑な試料に含まれる蛋白質や存在比率の少ないペプチドの同定とそのAsp残基の異性化率の定量は困難である。2018年度までは、クリスタリン中のAsp酸残基の異性体分析をLC-MS/MSで行っているが、最低、1μgの蛋白質が必要である。そこで、今年度にはこの問題を克服するために他の LC-MS/MSであるターゲットMRM(multiple reaction monitoring)分析を実施する。これにより水晶体の微量成分中のAsp異性体の定量化と自動化を図る。すなわち、LC-MS/MS(ion Trap法)ではLC上で分離している複数のAsp異性体含有ペプチドを実験者が目視で探していたが、ターゲットMRM法においては複数のMRMトランジションを設定し、分析終了後、これらのピークを検出することによりAsp異性体含有ペプチドの定量分析を行う。今年度は質量分析法を変更し、従来の1/10-1/50量の試料でも分析可能な方法を検討し、良好な結果が得られると考えられる。 最終的には簡単な分析方法を開発し、一般の誰でも分析できるようにし、その成果を論文として出版する。
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Causes of Carryover |
クリスタリン中のアスパラギン酸残基の異性体分析はLC-MS/MSで行っているが、最低、1μgの蛋白質が必要である。しかし、試料によっては1μgよりも微量で分析できないものがあり、さらに鋭敏な分析方法を開発する必要があったため、当初の計画通りの予算の執行が出来なかった。現在、従来の1/10-1/50量の試料でも分析可能な方法を開発し、良好な分析結果を得ている。次年度にはこの方法で、多くの試料を分析し、現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。また,国内外の学会参加費も支出予定である。
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Research Products
(3 results)