2017 Fiscal Year Research-status Report
分子カプセル内包αリノレン酸の抗生活習慣病への応用
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17K13222
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
吉清 恵介 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (30510739)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | α-リノレン酸 / エゴマ油 / シクロデキストリン / 環状オリゴ糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
α-リノレン酸を主成分とするエゴマ油と、環状オリゴ糖の一種であるシクロデキストリンから成る、粉末状の錯体「α-リノレン酸粉末」の調製方法を最適化した。次に、その体内吸収性を評価するために、健常なラットを用いた動物実験を行った。その結果、α-リノレン酸を粉末として餌に添加して摂取する事で、同量のα-リノレン酸を液体として餌に添加して摂取した場合と比べて、血漿中のα-リノレン酸濃度が有意に上昇する傾向が観察された。
また、腹部大動脈血と肝門脈血の血漿中の脂肪酸分析結果の比較から、粉末として摂取したα-リノレン酸は、両血管中の血液において、概ね同程度の濃度で存在することが確かめられた。これは、α-リノレン酸粉末の門脈を経由した体内吸収の可能性を支持するものではない。そのため、α-リノレン酸粉末は、通常の脂溶性栄養成分と同様にリンパ管吸収される可能性が高いと考えられた。以上の結果から、粉末として摂取されたα-リノレン酸は、液体として摂取した場合と比べて、より効率的に体内に吸収されることが明らかになり、「α-リノレン酸粉末」はオメガ3脂肪酸の効率的な摂取法となる可能性が示唆された。また、血漿中の脂肪酸分析結果の詳細な解析により、α-リノレン酸の代謝産物であるエイコサペンタエン酸の濃度の上昇が観察された。これにより、粉末として摂取したα-リノレン酸が体内に取り込まれ、通常の脂肪酸と同様に代謝されることが示された。さらに、血漿中のアラキドン酸濃度の減少が確認された。これは、α-リノレン酸粉末の摂取によりオメガ3脂肪酸の代謝が活性化することで、拮抗的にオメガ6脂肪酸の代謝が抑制されたことによると推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度には、α-リノレン酸粉末の調整法の最適化と生成物の物理化学的評価、および健常なラットを使用した動物実験を予定通り行った。また、平成30年度に予定していた、病態モデルラットを用いた動物実験を前倒して行った。この実験実施時期の変更は、動物実験の効率化のためであり、研究全体への影響は生じない。動物実験の前倒しにより、当初予定していた、脂質代謝に関する遺伝子の発現解析を、平成30年度に実施することに変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間の研究期間で実施する予定の研究は、順調に進んでいるため、研究計画に大きな変更は必要ないと判断している。そのため、このまま研究を遂行する予定である。健常ラットを用いた実験結果においては、α-リノレン酸粉末の体内吸収経路について、当初の予測と異なるものとなった。この結果の詳細な検討により、α-リノレン酸粉末の詳細な体内吸収メカニズムに関して、推測することが可能となった。平成30年度では、これをサポートするために、ラット排泄物中のシクロデキストリンの含有の有無を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度に実施予定であった実験の一部と、平成30年度に実施予定であった実験の一部に関して、実施年度を入れ替えた。そのために、それに関わる実験消耗品の金額に差が生じた。繰越分は、当該の実験で使用する予定である。
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Research Products
(3 results)