2018 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージの糖鎖抗原の発現変動に基づく新規NASHバイオマーカーの探索
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17K13223
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
岡田 貴裕 佐賀大学, 医学部, 助教 (30584809)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / マクロファージ / バイオマーカー / 糖鎖 / 肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝常在性マクロファージ(Kupffer細胞: KC)は炎症反応や組織修復などに関与し、肝臓の健常性維持にはたらく細胞集団である。その機能異常は種々の肝疾患に関連して起こり、過剰に活性化したKCは組織傷害や線維化の悪性化を引き起こす。特に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)においては、極めて早期より炎症促進的に振る舞うようになり、病態形成機序の中心的役割を担うことが明らかとなりつつある。 これまでに得られた知見をもとに、本研究課題の代表者はKCの細胞表面タンパク質のみならず、これらに翻訳後修飾される糖鎖のバリエーションもまた肝炎の進展に連動して変化するのではないかと予想した。このような仮説に基づき、本課題を通じてNASHの進展に伴うKCの性状変化、および診断バイオマーカーとなりうる糖鎖抗原の存在を調査することにした。 動物モデルとして、コリン欠乏/低メチオニン/高脂肪食を自由摂食させることでNASH様病態を発症したC57B6/Jマウスを用いた。対照群、およびNASH誘発群の肝臓からKCを単離・純化し、レクチンアレイ法により膜タンパク質に結合した糖鎖のバリエーションを比較解析した。その結果、対照群、NASH誘発群のいずれにおいても、膜タンパク質に起こる糖鎖修飾量、および糖鎖のフコシル化の頻度に明確な変化は見られなかった。一方で、病態の進展に連動し、末端にガラクトース/N-アセチルガラクトサミン残基を有した糖鎖の割合が増加することが明らかとなった。また同様に、アスパラギン結合型糖鎖の分岐構造数が増えることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、初代培養細胞を用いた検討を計画していたが、長期間の維持が難しかったために断念せざるを得なかった。しかしながら、動物モデルを用いた検討を先行して網羅的な解析を行ったことで、NASHの進展度とKCの糖鎖修飾バランスとの間に一定の相関があるという確証が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、膜タンパク質に結合した糖鎖を回収し、その構造バリエーションを解析することにより、どのような糖鎖がNASHの進展度の指標となりうるのかを明らかにしていく予定である。また、どのような病態関連因子がKCの糖鎖修飾に変動をもたらすのかについても調査を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成29年度よりエフォート配分を変更せざるを得なくなったため、開始時期を遅らせ、研究期間を一年延長する必要が生じた。次年度は標的とする糖鎖の解析に注力したいため、繰越した経費は主にマウスの購入、糖鎖解析の必要経費、成果発表に必要な出張旅費に充てたいと考えている。
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