2017 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム障害児の感覚異常の対処を支援するシステムの構築
Project/Area Number |
17K13255
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
宮崎 仁 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (20550396)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 感覚特性 / 視覚 / オブジェクト検出 / 機械学習 / ディープラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,自閉症スペクトラム障害児(以下,ASD児)とその家族を支援するために,①ASD児が視覚的に苦手とするものを調査し,②スマートフォンのカメラで撮影した写真の中にASD児が苦手とするものが写っているかどうかをオブジェクト検出技術によって判定するものである. 初年度は,画像判定のアルゴリズムを確立し,コンピュータ上で動作するかどうかの予備実験をおこなう計画であった.この実施計画に基づき,まず,特定の物体が写真の中に含まれているかどうかを判定するプログラムを実装した.予備実験の結果,プログラムに読み込ませた写真が,何パーセントの確率で学習させた物体であるかを示すことができた.また,検出した物体を矩形で囲み,その近くに名前を添えるブログラムを実装し,実験の結果,高性能なコンピュータ上では数秒程度で判定することができた. 世間一般に,人工知能として知られている技術を導入することで,計画当初よりもより精度の高い判定ができるようになった.物体の検出には,ある程度のゆとりをもって画像判定することができたので,全く同じものでなくても,似ているものを判定することができた.また確率表示をすることもできたので,その数字を目安に,ASD児の苦手なものかどうかの重要度として参考にすることができる.その一方で,ASD児が苦手とするものにどのようなものがあるのか,についての調査がまだ十分でない.初年度の研究実施の過程で,福祉施設やASD児の親から調査に協力していただける旨の回答をいただいているので,この調査を実施して,ASD児とその家族のためとなるプログラムに更新していく予定である. よって,本年度では,ASD児の苦手とするものを学習させて判定するプログラムへと改良し,また,精度をあげるために多くの写真を用意して学習させていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,画像判定のアルゴリズムを確立し,コンピュータ上で動作するかどうかの予備実験をおこなう計画であった.この実施計画に基づき,まず,特定の物体が写真の中に含まれているかどうかを判定するプログラムを実装した. 検出したい画像の類似物を検出するために,機械学習の一種であるディープラーニング技術を利用した.どの物体を検出すればよいかをコンピュータに覚えさせるために,機械学習という技術を用いた.本来であれば,ディープラーニングによる画像の学習では,一つの物体あたり数千から数万の画像を用いて学習をさせなければならない.しかしながら,その学習には高性能なコンピュータが複数台あっても多くの時間が必要となる.今回はまずそのプログラムが動作するかどうかを確認するために数百枚の画像でプロトタイプのプログラムを作成して,テストした.テストの結果,プログラムに読み込ませた写真が,何パーセントの確率で学習させた物体であるかを示すことができた.物体を学習させるための画像を増やすことで,この精度は上がっていくが,数百枚の画像からの学習でもおおむね良好な結果となった.さらに,コップ,自転車,テレビなどの一般的な物体について既に学習されたデータセットを利用して,物体検出し,判定されたものは矩形で囲みその近くに名前を表示するプログラムを実装した.コンピュータ上では,ものの数秒で,写真の中の物体が矩形で囲まれ名前が付加された画像が出力された.一枚の写真に検出する物体が複数あったとしても同時に検出することができた. 初年度に予定していた,アルゴリズムの作成と予備実験は順調に結果を出すことができた.その一方で,ASD児が苦手とするものにどのようなものがあるのか,についての調査がまだ十分でないため,本年度も引き続き調査を行いながら,プログラムを改良する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
世間一般に,人工知能として知られている技術を導入することで,計画当初よりもより精度の高い判定ができるようになった.その一方で,判定したい物体を学習させるために大量の画像を用意することが必要となった.今回の実験では,数百枚程度の画像を用いて学習させたが,本来は数千枚から数万枚の画像が必要となる. 本年度の研究の推進方策としては,まず,ASD児の苦手とするものを初年度以上に調査し,何を学習させるべきかの取捨選択を行う.初年度の研究実施の過程で,福祉施設やASD児の親から調査に協力していただける旨の回答をいただいているので,この調査を実施する予定である.何を学習させるべきかを決定してくことと並行してそれらの画像を可能な限り多く収集して,判定プログラムの精度の向上に努める. 次に,本研究で開発するプログラムはスマートフォンで実行することを目標としているが,当初の予測通り,スマートフォンの性能がリアルタイムな画像判定には十分でない.よって,計画通りに,スマートフォンで撮影した写真を高性能なコンピュータに転送して,画像判定処理を行ったものをスマートフォンに返すためのシステム開発を行う.当初の計画では,画像判定に時間がかかりすぎるようであれば,写真の解像度を下げるなどの工夫をする予定であったが,予備実験の結果からは,物体の学習には多大な時間を必要とするが,一度学習してしまえば,その判定や検出にはさほど時間がかからないことがわかっている.よって,当初の予定通り,GPGPU技術を用いた並列演算による処理によって,画像の判定を行う予定である.スマートフォンと本システムとのインタフェースにはWebアプリケーションとして実装することで対応する予定である.
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Causes of Carryover |
(理由)開発用計算機および動作確認用計算機を計上していたが,今年度に開発予定だった画像解析アルゴリズムに人工知能技術を取り入れたことからサーバサイドのプログラムの開発に時間を要したため,フロントエンドの動作確認用計算機を計上しなかった. (使用計画)人工知能を取り入れたことで,動作確認にも高性能なGPUが搭載されたコンピュータが必要となる.よって今年度の予算と併せ,GPUが搭載された動作確認用計算機を計上する予定である.
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