2017 Fiscal Year Research-status Report
糖脂質MPIaseライブラリーを用いた膜タンパク質膜挿入活性機構の解明
Project/Area Number |
17K13262
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
藤川 紘樹 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・構造生命科学研究部, 研究員 (50755874)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 糖脂質 / シャペロン / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
MPIase類縁体の糖鎖伸長や蛍光官能基の導入に対応するため、各単糖ユニットの保護基を再考した新戦略を立案した。新戦略で3糖骨格の合成を達成したが、低収率の段階があり、ピロリン脂質の導入には至らなかった。 一方、得られた3糖をドナーに誘導し、ジアシルグリセロールとの縮合反応に供したところ、高いα選択性でグルコサミニル化が進行し、ピロリン酸を欠損したMPIase類縁体(Trisac-DAG)を合成することができた。 MPIase類縁体の膜タンパク質膜挿入活性試験の結果、天然MPIaseに20%程度の膜タンパク質膜挿入活性があった。興味深いことに、化学合成した3糖ピロリン脂質体(mini-MPIase-3)に、5%程度の有意な活性が見られた。一方、GlcNAcの6位Ac基を欠いた3糖ピロリン脂質(mini-MPIase-3 (6-OH))には殆んど活性が見られなかった。このことから、「糖鎖の長さ」「GlcNAc6位のAc基」が、効率的な膜タンパク質膜挿入に寄与していることが分かった。 脂質部を欠いたMPIase類縁体をMPIase類縁体を含まないリポソームに高濃度で添加した結果、膜タンパク質の膜挿入は起こらなかったため、MPIaseは膜にアンカリングされている事が重要であると分かった。 一方、MPIase類縁体をmini-MPIase-3を含むリポソームに添加したところ、活性の増減が見られた事から、MPIase類縁体の糖鎖部が、リン酸基やAc基を介して、タンパク質と相互作用していることが分かった。これらの結果は、大腸菌の内膜のMPIaseの糖鎖部が膜タンパク質を捕捉・凝集を抑制し、内膜へと導くという我々の仮説を支持するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、糖脂質MPIaseが関与する大腸菌の膜タンパク質膜挿入機構を解明するため、天然MPIaseに加えて、化学合成したMPIase類縁体を用いて、官能基レベルでの構造活性相関を明らかにする事を目的としている。 これまでにMPIaseの最小単位である3糖ピロリン脂質(mini-MPIase-3)の化学合成に成功し、同様の戦略で、グルコサミン6位のAc基を除いた3糖ピロリン脂質(mini-MPIase-3 (6-OH))、3糖リン酸体(Trisac-P)、グルコサミン6位のAc基を除いた3糖リン酸体(Trisac-P (6-OH))などの類縁体を合成した。これらの類縁体を用いることで、「糖鎖の長さ」「GlcNAc6位のAc基」が膜タンパク質の膜挿入に寄与していることを明らかにした。 また、糖鎖伸長や標識(蛍光、13C)化に対応した新たな合成戦略を立案し、3糖骨格の構築まで達成した。この新規の3糖をドナーに導き、ジアシルグリセロールを導入することで、ピロリン酸を欠損した類縁体である3糖ジアシルグリセロール(Trisac-DAG)を合成した。このTrisac-DAGの膜タンパク質膜挿入活性を調べたところ、Trisac-DAGには膜タンパク質膜挿入活性がないことが分かった。このことから、ピロリン酸が膜タンパク質の膜挿入に必須である事が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新規の3糖ユニットの合成ルートを最適化し、3糖類縁体(mini-MPIase-3, 蛍光標識mini-MPIase-3, 13C標識mini-MPIase-3)の合成を行う。得られた類縁体のうち、mini-MPIase-3は、固体NMRを用いたリン脂質膜の物性に与える影響の検証に用いる。蛍光標識mini-MPIase-3は、膜上でのmini-MPIase-3の挙動、会合状態の観察に用いる。13C標識mini-MPIase-3は、NMRを用いたタンパク質との相互作用解析に用いる。 3糖ユニットを3糖アクセプターと3糖ドナーへ導き、両者を縮合することで、6糖骨格を構築する。3糖+3糖の立体選択性、アジド基の還元方法、リン脂質の導入について検討する。
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