2018 Fiscal Year Research-status Report
糖脂質MPIaseライブラリーを用いた膜タンパク質膜挿入活性機構の解明
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17K13262
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
藤川 紘樹 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・構造生命科学研究部, 研究員 (50755874)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 糖脂質 / 膜タンパク質 / 膜挿入 / シャペロン |
Outline of Annual Research Achievements |
3糖ピロリン脂質(mini-MPIase-3)およびその類縁体の合成と活性をまとめ、ACS Chem. Biol. に発表(2018年7/31)した。また、MPIaseの発見、構造決定、MPIase類縁体の合成、構造活性相関など最近のMPIase研究の進展をTrends in Glycoscience and Glycotechnology (TIGG)に総説として発表(2019年2/1)した。 糖鎖伸長や標識(蛍光、スピン)化に対応した新戦略の最適化を行い、従来より効率よく三糖を得られるようになった。得られた3糖を用いて、基質タンパク質モデル(Pf3ファージコートタンパク)との相互作用解析のためのスピン標識3糖リン酸体(SL-Trisac-P)や膜上でのMPIaseの挙動観察のための蛍光標識3糖ピロリン脂質(FL-mini-MPIase-3)を合成した。FL-mini-MPIase-3では、4種類のリンカー(PEG4, PEG8, PEG12, C6アルキル)と2種類の蛍光官能基(Cy-7, CyLyte-7)を検討した。アルキルリンカー導入までは活性を保持していたが、蛍光官能基を導入する事で、活性が無くなる事が分かった。活性を持ったmini-MPIase-3に少量のFL-mini-MPIase-3を混ぜた場合に活性が出るかどうか確認中である。 また、6糖ピロリン脂質(mini-MPIase-6)の合成を目指して、3糖+3糖=6糖の合成を行い、6糖骨格の生成を確認した。3糖アクセプターの反応性が低く、3糖ドナーが加水分解されたヘミアセタール体が副生し、低収率に留まった。現在、収率の改善を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖脂質MPIaseの最小構成単位である3糖ピロリン脂質(mini-MPIase-3)の合成を行い、mini-MPIase-3にも有意な膜タンパク質膜挿入活性がある事を見出した。これにより化学合成したmini-MPIase-3類縁体を用いた構造活性相関研究が可能となった。これまでに、3糖ピロリン脂質(mini-MPIase-3)、グルコサミンの6位にAc基のない3糖ピロリン脂質(mini-MPIase-3(6-OH))、3糖リン酸体(Trisac-P)、グルコサミンの6位にAc基のない3糖リン酸体(Trisac-P(6-OH))、3糖ジアシルグリセロール(Trisac-DAG)などを化学合成し、天然MPIase、天然MPIaseの糖鎖部(Polysac-P, Polysac)とともに、膜タンパク質膜挿入活性に供する事で、MPIaseのリン酸化された糖鎖部に膜タンパク質の凝集を抑制するシャペロン用の活性がある事、MPIaseは脂質部によって膜にアンカリングされている必要がある事などを明らかにした。これらの結果は、細胞質のリボソームで合成された疎水性の高い膜タンパク質が、内膜に存在するMPIaseの糖鎖部のリン酸基やAc基、その他の官能基を介して捕捉され、凝集の抑制を受けながら、最終的には膜と膜タンパク質の疎水性相互作用によって膜挿入に至るという我々の仮説を支持するものであった。 また、MPIaseの膜上での挙動を観察するために、蛍光標識化したmini-MPIase-3(FL-mini-MPIase-3)の合成を行った。3糖ピロリン脂質から、リンカーを介する事で、蛍光官能基の導入を行う事ができた。しかしながら、FL-mini-MPIase-3単独では、膜タンパク質の膜挿入活性がない事が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
蛍光標識mini-MPIase-3(FL-mini-MPIase-3)単独では、活性を失っていたため、活性を持ったmini-MPIase-3に少量のFL-mini-MPIase-3を混ぜて活性が出るかどうか確認していく。また、活性を保持したFL-mini-MPIase-3を再設計・合成していく。 活性の増強を目的に、6糖ピロリン脂質(mini-MPIase-6)の化学合成を行う。3糖+3糖の収率を向上させ、アジド基の還元反応を検討し、ピロリン脂質の導入を行う。 得られたFL-mini-MPIase-3は、膜上でのMPIaseの挙動の観察に用い、MPIaseの会合状態や膜シャペロンあるいはリボソームとの連携を観察したい。mini-MPIase-6は、膜タンパク質の膜挿入活性を調べ、mini-MPIase-3と比較する。
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Research Products
(9 results)