2017 Fiscal Year Research-status Report
細胞内タンパク質の阻害剤創出を指向したN置換型ベータペプチドの研究
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17K13265
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森本 淳平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70754935)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ペプチド / N置換型βペプチド / 配座制御 / 細胞膜透過性 / 立体構造解析 / 固相合成法 / フォルダマー / ペプトイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞内タンパク質の阻害剤を創出することを目指し、細胞膜透過性が高いことが期待されるN置換型βペプチドの合成法およびスクリーニング法の開発を行なっている。本年度は、研究計画に従い、基礎課題1(固相合成法の確立)、2(立体構造解析)、3(細胞膜透過性の評価)に取り組んだ。 基礎課題1:N置換型βペプチドの固相合成法の確立を行った。具体的には、Fmoc保護されたβアミノ酸を縮合する過程とアルデヒドを用いた還元的アミノ化の過程を繰り返すことで、N置換型βペプチドを固相合成できることを示した。この手法を用いることで、α位もしくはβ位に様々な置換基を有するN置換型βペプチドのオリゴマー合成に成功した。 基礎課題2:基礎課題1で合成したN置換型βペプチドについて、その立体構造の解析を実施した。具体的には、まず、2残基のペプチドに関して、局所的な配座を調べるため、NMRスペクトルを測定しアミド結合のシス・トランス比を算出した。この結果、β位にかさ高い置換基を有するN置換型βペプチドについては、アミド結合がトランス体に偏ることが明らかとなった。さらに、オリゴマーの立体構造に関して調べるためにCDスペクトルの測定を行ったところ、β位にかさ高い置換基を有するN置換型βペプチドは鎖長が長くなると特定の配座を安定して形成していることが示唆された。これらのことから、主鎖に特定の置換基を導入することで、配座制御されたN置換ペプチドを合成できることを示すことができた。 基礎課題3:細胞膜を模倣した人工膜を用いて化合物の膜透過性を測定する手法(PAMPA)を用いて、合成したN置換型βペプチドのいくつかの膜透過性を評価したところ、ペプチドに比べて高い膜透過性を示すことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、基礎課題1-3を実施した。基礎課題1(固相合成法の確立)については、Fmoc-βアミノ酸の液相合成は実施せず、購入可能なFmoc-βアミノ酸を利用することで、主題であるN置換型βペプチドの固相合成法の開発に専念し、実際に効率的な合成法を確立することに成功した。基礎課題2(立体構造解析)については、当初予定していた分子力学計算とNMRに加え、CDスペクトル解析を併用することによって、合成したN置換型βペプチドの立体構造の解析を実施した。基礎課題3(細胞膜透過性の評価)については、人工膜を用いたPAMPAによる膜透過性の評価を実施し、N置換型βペプチドが高い膜透過性を示すことを実証することに成功した。同じく基礎課題3の内容として当初予定していた培養細胞の単層膜を用いた膜透過性の評価については実施に至っていないが、実験系の立ち上げは行なっており、次年度すぐにでも実施できる体制が整っている。また、次年度予定している応用課題(大規模ライブラリからの阻害剤探索)に関しても、通常のペプチドライブラリを用いた同様の阻害剤探索を予備実験として実施したため、次年度開始後すぐに実施する体制が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎課題3(細胞膜透過性の評価)について、Caco-2やMDCK-IIなどの培養細胞を用いて、細胞単層膜に対するN置換型βペプチドの膜透過性の評価を実施する。また、応用課題(大規模ライブラリからの阻害剤探索)に関しては、本年度に確立した固相合成法を用いてN置換型βペプチドの大規模ライブラリー(100万種類程度)を構築し、これを用いてがん関連細胞内タンパク質に対するスクリーニングを実施し、阻害剤の探索を試みる。
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