2017 Fiscal Year Research-status Report
ケミカルジェネティクスに基づいた多能性幹細胞の心筋分化機構の解明
Project/Area Number |
17K13267
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹本 靖 京都大学, 化学研究所, 助教 (50453543)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ケミカルバイオロジー / ケミカルジェネティクス / 小分子化合物 / 多能性幹細胞 / 心筋分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、心筋分化促進化合物KY02111の作用機序を明らかにすることで、多能性幹細胞の心筋分化機構を解明することを目的としている。これまでに、KY02111の結合タンパク質として、タンパク質Xを同定していた。そこで、平成29年度は、KY02111のタンパク質Xの機能に及ぼす影響について検討した。 まず、KY02111及びその誘導体のタンパク質Xとの結合能をサーマルシフトアッセイにより評価した。その結果、タンパク質Xとの結合能と心筋分化促進活性に強い相関が認められた。従って、KY02111により誘導される心筋分化において、タンパク質Xは重要な役割を果たしていることが強く示唆された。また、タンパク質Xの欠損変異体を作製し、KY02111の結合サイトの同定も行なった。 一方、タンパク質Xは酵素活性を有するが、KY02111はタンパク質Xの酵素活性を試験管内、及び細胞内で阻害しなかった。そこで、タンパク質Xのタンパク質間相互作用について検討した。データベースに登録されているタンパク質Xの結合タンパク質の中で、タンパク質Yに着目した。タンパク質Yに変異が生じると、正常な心筋分化が生じず、機能不全が生じることが報告されており、タンパク質Yも心筋分化において重要な役割を果たしていると考えられている。免疫沈降法により、細胞内でタンパク質Xとタンパク質Yが結合していることが確認でき、またこの結合はKY02111の添加により阻害された。さらに、KY02111の誘導体の中で、KY02111と同様に心筋分化促進活性を有する化合物はタンパク質Xとタンパク質Yの結合を阻害したのに対し、心筋分化促進活性を有さない誘導体は結合を阻害しなかった。以上の結果より、KY02111はタンパク質Xに結合し、タンパク質Xとタンパク質Yの結合を阻害することで心筋分化を促進することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の目的としていた、KY02111のタンパク質Xの機能に及ぼす影響を明らかにすることができたから。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の結果から、「KY02111の結合タンパク質として同定したタンパク質Xは、タンパク質Yに結合してその機能を抑制しているが、KY02111がタンパク質Xに結合して、その結合を阻害することで、タンパク質Yが活性し、心筋分化が促進される」という可能性が考えられた。そこで平成30年度は、この仮説を検証する。具体的には、まずタンパク質Xあるいはタンパク質YをCRISPR-Cas9システムによりノックアウトした多能性幹細胞を樹立する。次に、樹立したノックアウト細胞で、KY02111の心筋分化促進活性に変化が生じるか検討し、上記の仮説が正しいか検証する。
|
Causes of Carryover |
研究当初は、KY02111がタンパク質Xの酵素活性を阻害することを想定していた。そこでKY02111の様々な誘導体についても酵素活性への影響を検討することを考慮して、試験管内、及び細胞レベルでの酵素活性を測定するための経費を計上していた。しかし、予想に反して、KY02111はタンパク質Xの酵素活性を阻害しなかったため、他の誘導体での酵素阻害活性について検討する必要がなくなり、その予算を次年度に繰り越した。繰り越した予算は、遺伝子をノックアウトした多能性幹細胞の樹立、及びKY02111の心筋分化促進活性に及ぼす影響への検証に充てる。
|
Research Products
(2 results)