2017 Fiscal Year Research-status Report
Physiology of Hippocampal Memory Engram
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17K13272
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 和正 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (10772650)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海馬 / 記憶痕跡 / 場所細胞 / 最初期遺伝子 / 文脈記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、日々の経験についての記憶を保存する細胞群(記憶痕跡、memory engram)が海馬内に形成されることが明らかになってきた。しかし、それらがどのように形成され、どのように機能しているのかは未だ全くの謎のままである。 本研究計画は、1) 海馬が記憶痕跡を残すための活動パターン、2) 記憶痕跡から記憶を想起するための活動パターンの2つを自由行動下マウスで同定することを目的とした。 c-Fos-tTAマウスでのテトロード記録と光遺伝学的同定法を用いて、マウスが文脈記憶を記銘および想起する際の記憶痕跡の活動を調べたところ、場所細胞の一部が記憶痕跡として特徴的な活動パターンを示すことが分かった。バースト活動がシータ域の周波数で繰り返し起こるというこの活動パターンは、in vitroである種の長期増強を誘導する刺激プロトコルとしても知られている。また、文脈記憶の想起時には記憶痕跡として同定された場所細胞とそれ以外の場所細胞とで、全く異なる振る舞いを示すことが明らかになった。ある文脈Aで形成された記憶痕跡Aは、マウスが元の文脈記憶Aを再経験するときと、全く異なる文脈Bを経験する時とで活動量を大きく変化させた。これに対して、記憶痕跡ではない場所細胞は異なる文脈に対して場所受容野を再配置させることで表現していた。こうした結果は、これら記憶痕跡がどのような動作原理で記憶の記銘と想起に関わるのかという問題の大きなヒントであると考えられる。 本研究成果は論文として投稿し、2018年5月現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究計画は概ね完了し、現在はその発見からさらに発展させた新規研究テーマに取り組んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
海馬の記憶痕跡において見られた二つの活動パターンは、記憶装置としての海馬の動作原理を理解する上で大きな助けとなるものである。 今後は、この発見の時空間的一般性やその活動パターンを生み出す機序の解明が待たれる。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していたいくつかの備品を購入せず、安価な代替品を購入して研究を遂行したため。 ここで発生した次年度使用額は、より大きな規模での実験を遂行するための消耗品費または物品費に充てられる。
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Research Products
(4 results)