2017 Fiscal Year Research-status Report
Neural mechanisms of perceptual decision
Project/Area Number |
17K13274
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
阿部 央 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (10711161)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳 / 視覚 / MT / 知覚 / 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ヒトと同じ霊長類であるマーモセットのMT野の視覚応答を調べるための実験セットアップを中心に行った。まずは麻酔下で神経応答を調べることを計画していたので、その予定通りに進めた。麻酔下のマーモセットに、動き視覚刺激を提示したときのMT野の視覚神経応答を、光学内因性信号計測により測定して解析した。その結果、動き視覚刺激の提示位置に応じて、MT野内の異なる領域が活動していること(レチノトピー)を観察することができた。これにより、麻酔管理、視覚刺激提示、データ解析などの現在の実験系が十分に機能していることを確認した。
さらに、MT野を含む神経回路を明らかにするため、光学内因性信号計測で得られたレチノトピーマップに基づいて、中心窩、周辺上視野、周辺下視野に対応するMT野内の3箇所に、異なる蛍光タンパク質を発現する順行性のウイルストレーサーを注入して調べた。MT野からは、後頭葉(V1野,V2野,V3野,V4野)、側頭葉(MTC野, MST野, FST野, FSTv野)、頭頂葉(V3A野,V6野,V6A野,AIP野,LIP野,MIP野)、前頭前野皮質(8野)に投射していることが分かった。3つの注入では、どれも同様な脳領野に投射していたが、前頭前野皮質や頭頂葉などの投射先の各脳領野内では、重なり合っていなかった。このことから、レチノトピーに対応した神経結合がMT野と投射先の脳領野の間に存在し、視野の同じ部分を表現する細胞集団が、各脳領野間でつながって動き視覚刺激を処理する神経回路を構成すると考えられた。現在、MT野からの神経投射についての結果を論文にまとめ、投稿準備中である。また、ウイルスを脳内注入する手法に問題がないことを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、マーモセットのMT野の視覚応答を調べるための実験セットアップを中心に行った。まずは麻酔下で神経応答を調べることを計画していたので、その予定通りに進めた。麻酔下のマーモセットに、動き刺激を提示したときのMT野の神経応答を、光学内因性信号計測により測定して解析した。その結果、MT野のレチノトピーマップを明らかにすることができたので、麻酔管理、視覚刺激提示、実験データ解析など、現在の実験系が十分に機能していることを確認した。また、並行して、MT野の脳内の神経回路を明らかにするために、ウイルストレーサーをMT野に注入して、解剖学的研究を行い、MT野からの神経投射パターンを明らかにすることができた。現在結果を論文としてまとめている。また、ウイルスを脳内注入する手法に問題がないことを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の実験計画通りに研究を進める。麻酔下でMT野からの視覚神経応答を、光学内因性信号計測により測定することができ、また、ウイルストレーサーをMT野に注入して、神経投射パターンを明らかにすることができた。今後は、光学内因性信号計測よりもS/Nの高い、カルシウムインジケーター(GCaMP6)をコードするウイルスをMT野に注入することで、麻酔下のMT野の視覚神経応答を、カルシウムシグナルとして計測する。それにより、より詳細なMT野の機能構造を明らかにする。
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Causes of Carryover |
一部の実験実施のタイミングが少しずれたため、動物の購入時期がずれ、差額が生じた。
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