2019 Fiscal Year Research-status Report
Neural mechanisms of perceptual decision
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17K13274
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
阿部 央 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (10711161)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 眼球運動 / 前頭眼野 / 視覚 / 意思決定 / マーモセット / 霊長類 / サル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、知覚的な意思決定に重要な前頭眼野の神経活動の詳細を調べるため、マーモセットの前頭眼窩野を含む広い領域にカルシウムインジケータをコードするウイルスを注入し、観察窓の設置手術を行った。また、眼球運動計測用のカメラをセットアップし、1光子イメージングならびに2光子イメージングを行う測定装置ならびに測定条件の最適化を行った。カルシウムインジケータに加えて、トレーサーを注入する実験についても、過去のテストデータでトレーサー信号とカルシウム信号を対応付けることはできており、実現の目処が立っている。 また、共同研究先で行った霊長類2光子イメージング実験のデータ解析を行った。サルは空間的ワーキングメモリー課題遂行を行い、課題遂行中の前頭前野皮質の浅層の神経細胞の活動としてカルシウム信号を計測した。その結果、約2割の神経細胞で課題関連活動が見られ、主に反対側の空間情報を保持していることが分かった。これらは、過去の電気生理学的手法で得られた知見とほぼ一致しており、サル前頭皮質の神経活動において、カルシウム信号はスパイク信号と同様な情報を保持していることを確認した。更に、そのような神経活動を持つ細胞の空間構造を検討した所、記憶情報を保持する神経細胞は主に、主溝の後部に集まっていることが分かった。空間構造についてさらに詳しく調べるために、神経細胞間の活動の相関を調べたところ、この相関は距離に依存することが分かった。これは、機能的な神経結合が近傍の細胞間で強いことを示唆する。これらの内容について、国内学会1件と国際学会1件の学会発表を行った。現在、研究内容を論文にまとめ、現在論文誌に投稿している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、申請者の所属先が変更となり、本申請研究以外の業務に大きな変更があったため、特に本年度の前半は本申請研究とは別の業務に多くの時間を費やす必要があった。しかし現在は、所属先の業務に、本申請研究と強く関連する業務が加わったため、所属先の主要な業務の一部として、一緒に本申請研究も進めることができることとなった。 現在は、動物2個体において、カルシウムインジケータをコードするウイルスを注入し、観察窓を設置したところである。これから、自然画像を自由に見ているときの前頭眼野の神経活動と眼球運動の同時計測を開始する。また、前頭眼野の神経活動と眼球運動の関係をより効率的に調べるために、比較的簡単な眼球運動を行わせる実験課題の訓練を開始するところである。 また、霊長類の2光子カルシウムイメージングの実験手技取得を主な目的とした共同研究先で行った実験について、データ解析を進めており、その結果について2件の学会発表を行った。現在論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
カルシウムインジケータが前頭眼野を含む領域に発現し、観察窓を設置した動物からカルシウムイメージングを開始する。まずは、自然画像を自由に見ているときの神経活動と眼球運動を同時に計測する。前頭眼野を含む広範囲の領域から多数の神経細胞から同時計測することで、これまでの主な電気生理学的手法である単一ユニット記録法で調べてきた単一細胞の情報表現のみならず、細胞集団として、どのような情報表現がなされているかを明らかにする。また、カルシウムインジケータに加えて、トレーサーを同時に注入し、注入領域の神経細胞の活動と、神経線維投射先との関係を明らかにすることで、眼球運動の意思決定における脳機能と解剖学的側面の両面について検討し、脳の基本的な情報処理過程の解明に貢献する。さらに、眼球運動を誘発するための簡単な実験課題の訓練を開始し、眼球運動の意思決定をより効率的に調べることのできる実験状況を作り出し、研究の進展を目指す。
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Causes of Carryover |
申請者の所属先が変更となり、本申請研究以外の業務に大きな変更が生じたため、本申請研究の進捗が遅れてしまったため。
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