2017 Fiscal Year Research-status Report
Experience-dependent change of visual feature representation in mouse visual cortex
Project/Area Number |
17K13276
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 盛史 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (30723259)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大脳皮質視覚野 / デコーディング / 画像復元 / 2光子イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マウス大脳皮質視覚野の感覚表現の学習に依存的変化の解明を目的とする。特に、2光子イメージングにより集団単一細胞の活動を記録し、画像再構成というデコーディングの解析手法と組み合わせることにより、詳細な解析を行う。 マウスに課す学習課題に関しては、2種類の学習課題を想定しており、一つは線分の傾きを弁別させる視覚特徴に依存した課題、もう一つは視覚刺激の位置情報を弁別させる視野の位置に依存した課題である。このうち視覚特徴に依存した課題は実用的な実験系として確立できた。しかし視覚刺激の位置を弁別させる課題に関しては効率的な学習条件を探索中である。 また、イメージング手法の改良を行った。細胞活動イメージングに用いるカルシウム指示たんぱく質の発現量の調整と低倍率の対物レンズを組み合わせることにより、約2ミリ四方の広範囲から、単一細胞活動と想定されるユニット活動をビデオレートで記録できた。これにより、複数の視覚領野の活動が同時に記録可能となった。また、低時間分解能ながら約4ミリ四方範囲内のほぼすべての視覚領野の活動を記録できることも確認した。 解析手法に関しては、画像復元の手法を改良して、より少数の細胞の活動から画像が復元できた。具体的には自然画像は平均20個弱の細胞を適切に選択すれば復元可能であった。この成果は論文投稿準備中で、preprint版をBioRxivに投稿した。 1光子のwide field imaging下において光遺伝学的手法により脳活動が操作できることを確認した。例えば、一次視覚野を刺激すると網膜部位対応を示す高次視覚野の活動が特異的に上昇した。この手法は学習前後あるいは課題中の領野間の情報伝播の解析に適用できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況に関しては、全体としてはおおむね順調であると考える。ただし、行動実験に関しては、一部の行動課題の確立も含め予定より遅れている。合わせてメインデータの取得も遅れ気味である。この理由として、一部の行動課題が想定していたよりも難易度が高かった点と、後述するように解析手法の論文投稿を優先し、そちらの準備に時間を割いたことによる。 予定より進捗した点として、解析手法に関して論文投稿まで進められた点がまず挙げられる。多くの時間を論文準備に割いたため他の部分に遅れが生じているが、論文投稿可能な時点までは到達でき、preprint版をBioRxivに投稿した。また、光遺伝学を用いた脳活動操作に関しては2年目の研究計画に組み込んでいたが、少なくとも1光子wide-field imagingの実験系においては実用可能であることが確認できた。こちらの実験系は様々な実験に応用が可能であるため、今後、様々な実験系での展開が見込まれる。ただし、2光子イメージング下での活動制御はまだ実現できていないため、こちらは継続して実験系の確立を行っていく。 また、当初予定には含まれていなかったが、イメージング手法が改良できた点も進捗した点である。こちらの成果に関しても手法論文として論文投稿準備中であり、本課題期間中の論文投稿を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、現在遅れているメインの実験を進める予定である。行動実験に関しては、一部は実験系として確立しているので、そちら集中的に進める予定である。一部の実験系の確立が遅れている行動課題に関しては時間の余裕を見て進める。 また、1年目で確立した解析手法を用いることにより、学習に依存した視覚表現の変化をより詳細に解析することができるようになった。特に、視覚表現に関して通常の状態(学習前)では少数の細胞が主な情報を持っている。学習により、これらの情報を持っている少数の細胞が変化を起こすのか、その他の情報量が少ない細胞が変化を起こすのかを調べる予定である。また、広域2光子イメージング手法により複数領野の活動の同時記録が可能になった。これを利用しての学習依存的変化の領野間の違いに加え、領野間での相関活動変化及びその情報表現への影響なども解析していく予定である。 また、1光子wide-field imagingでの光遺伝学による脳活動の操作は様々な応用が考えられる。学習前後での領野間での情報伝播の変化や、学習に関わらず動物の覚醒状態・行動状態依存的な変化を調べることが可能となるので、より積極的に活用していきたいと考える。
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