2017 Fiscal Year Research-status Report
Relocation and Transformation by New Village Construction on Policy in China:Focus on the Farmers Life Practice
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17K13281
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
閻 美芳 宇都宮大学, 雑草と里山の科学教育研究センター, 講師 (40754213)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 団地移転プロジェクト / 村の消失 / 農民身分 / 生活技法 / 農的空間利用 / 農村都市化 / コミュニティ再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査に先立ち、日中社会学会で「新型農村社区移転と村の消失過程にみる村人の忍従と抵抗の論理――中国天津市武清区X村を事例に――」というタイトルで学会発表を行い、中国の社会を研究する日本と中国の社会学者から意見を徴収した。 このような農民を農民身分のまま、団地に移転させる「団地移転プロジェクト」がどのような政府の考えのもとで、中国全土でおこなれるようになったのか。これについて、中国人民大学と北京外国語大学の農村社会学者から意見を聞いた。 その後、10月に「団地移転プロジェクト」の実施農村に入って、失地農家と団地に移転した農家10軒ほど、聞き取り調査を実施してきた。調査に入ったのは、ちょうどトウモロコシの収穫時期であったため、団地移転後も農業に従事する農家らが、どのように団地の中の空間を「農的空間利用」をしているのか、参与観察をすることができた。そこでわかったことは、団地の中の道路、道路の両側の緑化樹の間、団地の中の駐車場、団地の中の広場、言ってみれば、団地の中の空いている隙間がすべてトウモロコシの干し場として利用されていた。このことは団地の中だけではなく、団地を囲む周辺の道路でも同じである。農家は団地に移転する前に、手作業で収穫したトウモロコシを自分の庭に持って帰り、そこで皮を剥く作業をしていたが、団地に移転した後、農家家屋のような庭をなくしたため、団地の空き地と団地周辺の空き地が農家に庭として「農的利用」されるようになったのである。 また、農家が団地に移転したあと、村の跡地とどのように向き合っているのかについても、未だに移転せず、村で暮らし続ける村びとに話を聞くことができたので、農家家屋の跡地利用についても、資料収集ができた。 現在、2017年の調査データをもとに、論文をまとめているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査地となる天津市武清区の農村は、2017年の調査が始まる前、2008年から2016年にかけて、断続的に調査してきたところである。このように、調査に入る前から、基本的な調査の土台はすでに十分に整った状況であったため、調査がおおむね順調に進展することができた。 2017年の調査で、今までの調査で培ってきた現地の農家との信頼関係をもとに、個別の聞き取り調査を順調にすることができた。団地に移転してから、社交ダンスを始める人があらわれたり、広場ダンスを楽しむ人たちもいた。知り合いの村びとを通して、この新たな「都市市民的な娯楽」についても、「発見」できた。 ただ、反省点もあった。2017年はトウモロコシの収穫時期に調査に入ったため、農家がトウモロコシの収穫に追われて忙しく、ゆっくり話を聞かせてもらうことができなかった。農産物収穫後の団地の農的利用の一端を参与観察できたものの、団地に移転した村びとが、家屋形態、就業への対応、消費支出、コミュニティとの付き合い方でどのような生活上の変容を経験したのかについて、深く調査できなかった。これを踏まえて、2018年は調査時期をずらすなどの工夫をしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年は引き続き、団地移転プロジェクトが実施される農村に入って、調査を実施する。2017年度に、鎮政府と村行政の人に話を聞けなかったことを反省して、今年は知人を介して、行政への聞き取りを取り入れ、団地移転プロジェクトが実施されてからの産業構造上の変化を把握する。例えば、団地に移転する農家の戸数、人口などの基本データや、団地移転後に、鎮政府が誘致した工場の数や、新たに増えた工場で働く人の数などを把握する。 また、団地に移転した村びとが、家屋形態、就業への対応、消費支出、コミュニティとの付き合い方でどのような生活上の変容を経験したのか、アンケート調査の形式で把握する。と同時に、団地移転プロジェクトの目的のもう一つにあった、大規模農家の育成が、団地移転後にどのように実施されているのかも把握する。 すでに触れたように、団地に移転してから、団地の中の芝生を壊して畑にする農家が数多くいる。このような「破壊行為」がどのような理由で正当化され、団地の環境を管理する「物業会社」がなぜ管理しようとしないのか。農民身分のまま、農民を団地に移転する「団地移転プロジェクト」はどのような社会的な課題を直面しているのか。これについて2018年の調査でも把握していく予定であるが、「破壊行為」は民と官の不調和にも触れてしまう恐れがあるため、調査を変更させられる場合もある。その際、調査計画を変え、個々の農民が団地に移転してから、どのようにして「都市的ライフスタイル」に馴染もうとするのか、または、今までの生活技法をいかして、団地空間を飼いならそうとするのかなどのようなテーマに変更する予定である。
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Research Products
(1 results)