2017 Fiscal Year Research-status Report
政変後のチュニジアにおけるイスラーム過激派と世俗主義の動態に関する人類学的研究
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17K13287
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二ツ山 達朗 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 客員准教授 (20795710)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イスラームの人類学 / 「アラブの春」後の中東諸国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は政変後のチュニジアにおいて、イスラーム過激派と世俗主義の動態に関して人類学的に考察することを目的としている。初年度である本年度は、交付申請書に記載の実施計画に添うかたちで、先行研究分析、チュニジアにおける現地調査、一次資料の収集、研究成果の公表を行った。 先行研究分析においては、チュニジアのみならず近年の中東諸国・イスラームの人類学的議論を整理する目的から、「イスラームの人類学勉強会」を組織化し、7回の定例研究会を開催した。人類学をディシプリンとしてイスラームを対象とする際の論点について、若手研究者らを中心に議論を重ねたことで、現代イスラーム世界で生じている諸問題とその手法について推敲することができた。また問題意識を共有する若手研究者間のネットワーク構築にもつながった。 現地調査においては、8月7日から9月2日まで首都チュニスと、南部ケビリ県において聞き取り調査を主体としたフィールドワークを行った。その結果から、若年層の失業問題などの社会状況とイスラームの特定の主義や立場との関係性を分析した。また次年度の現地調査を円滑に行うための交渉を現地大学、聖者廟、市民団体に対して行ったことで、人的ネットワークを構築した。 一次資料の収集においては、同現地調査期間中に、国立資料センターや図書館、書店を頻繁に訪れ、政変後の動態について記された新聞、雜誌記事、書籍を収集した。 これらの研究成果の一部を、チュニジアにおいて行われた国際シンポジウムTJASSST2017、日本で行われたフランス国立科学研究センターとNIHU「現代中東地域研究」プロジェクトSIAS/KIAS共催のジョイントセミナーなどで発表した。国内外の研究者から多数のコメントを頂いたことで、現代社会におけるムスリムの動態や諸問題に関する議論を深めることができ、本研究の視野を広げることにつながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実施計画に記載の現地調査、一次資料の収集、研究成果の公表に関しては、おおむね順調に進展していることに加え、先行研究分析に関しては当初の計画を上回る成果をあげていることから、全体としては「(1)当初の計画以上に進展している」を選択した。 先行研究分析が当初の計画以上に進展している理由は、研究実績の概要で記した研究会がおよそ月に一度の頻度で定期的に開催されたことによる。頻繁に議論を重ねたことで、先行研究における論点を整理することができ、人類学でイスラームを論じる際の理論的支柱を固め、今後も問題意識を共有する研究者間のネットワークを構築する、という幾重もの効果をもたらした。これらは全て、本年度以降の研究の進展にもつながる成果である。 現地調査に関しては、ほぼ計画通りの日程で実施することができた。フィールドワークを実施した地方都市や調査対象者は、計画と若干の相違があるが、この理由は先行研究を整理し、現地の情報を収集したことにより、より良い研究成果が生まれると見込まれたためであり、有益な変更といえる。 一次資料の収集に関しては、ほぼ計画どおりに進展している。 研究成果の公表に関しては、計画していた学会発表を実施しなかったものもあるが、その理由は他の国際シンポジウムで公表したためであり、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
中間年度である今年度は、現地調査を主体としつつ、文献資料の収集と分析、研究成果の公表を行うことで、チュニジアにおけるアラブの春以降のイスラーム過激派と世俗主義の動態の分析を進める。 現地調査においては、昨年度に構築した人的ネットワークを活かし、聖者廟や市民団体等において聞き取り調査と参与観察を進める。 また引き続き文献資料の収集を進め、それらの分析を開始する。 研究成果の公表に関しては、分析が済んだ研究成果を積極的に国際的に発信したいと考えている。具体的には日本文化人類学会や、第5回中東学会世界大会などの国際学会で公表予定である。またそれらの内容を学術雑誌に公表する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に予定していた現地調査の一部を、本年に行うため、次年度使用額が生じた。 また、初年度に予定していた現地購入書籍・雑誌等も本年に行うため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(4 results)