2019 Fiscal Year Research-status Report
政変後のチュニジアにおけるイスラーム過激派と世俗主義の動態に関する人類学的研究
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17K13287
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Research Institution | Heian Jogakuin(St.Agnes')University |
Principal Investigator |
二ツ山 達朗 平安女学院大学, 国際観光学部, 准教授 (20795710)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イスラームの人類学 / 聖者廟をめぐる実践 / モノの人類学 / 「アラブの春」後の中東諸国 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である本年度は、交付申請書に記載の実施計画に添うかたちで、フィールド調査、資料の読解を行い、それらの調査から得られた成果を、国内外で発表した。 一昨年度に組織化した「イスラームの人類学勉強会」を本年度も継続し、他大学のメンバーも新たに加えて議論を行った。人類学的にイスラームを対象とする際の理論的課題について議論を重ねたことで、モノをめぐる記号論の議論が、聖者廟の扱いを分析する際の視座となることが明らかになった。また、これらの勉強会の成果を、学術雑誌に特集号を組むことで公表していく計画をすすめた。 現地調査は、8月末から9月中旬まで、2月中旬から3月初旬までを首都チュニスでおこなった。2月中旬から3月初旬の調査においては、後述のようにCOVID-19の影響で予定していたインタビューはできなかったが、その代替として書籍・資料の収集を行った。2011年の政変後のイスラーム過激派の伸張についての分析がある程度なされきているため、収集した資料からそれらの先行研究を整理し、論点を明確化した。また、書籍や新聞・インターネットなどを通じ、それらの先行研究では論じられていない、聖者廟への攻撃と、聖者廟を保護する動きについて情報収集を行った。 これらの研究成果の一部を、日本中東学会第35回年次大会で発表した。また、そこで得られたコメントなどを反映させ、『イスラーム世界研究』に英語による特集号<Special Feature: Holy Relics and Religious Commodities in Islam>を組み、成果報告を行った。しかしながら、本務先の教育エフォートの増加やCOVID-19の影響により調査が進まなかったことから、研究期間の延長を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度に本務先が変わり教育エフォートが増加した影響を受け、実施計画に記載の平成31年度現地調査や分析・考察の計画の変更を余儀なくされた。 また、2月~3月に実施予定であった現地調査に関しては、COVID-19が欧州とチュニジアに蔓延し始めた頃であったため、現地に渡航したものの、ほとんどの調査期間を外出せずに過ごすこととなった。インタビューや参与観察などのフィールドワークはほぼ実施する事ができず、チュニスでの文献収集などに注力した。 研究成果の公表に関しては、国内学会発表1点、英文による論文2点、日本語によるエッセイ1点を公表した。当初の計画とは異なるものの、質的・量的には遜色のない研究成果をアウトプットできたと言える。これらの点から、総合的にみて「(3)ややおくれている」を選択した。 これらの状況から、2020年度における一年間の研究期間の延長を行った。COVID-19が世界中に蔓延するなかで、チュニジアにけるフィールド調査の目途はたたないが、現時点で収集できている現地資料・インタビューデータなどをもとに、成果をまとめるための最終年度にしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
一年間の延長を行ったために最終年度となった今年度は、これまでのデータを分析・考察し、国内外で成果報告を行う。 チュニジアにおけるフィールド調査については、可能であれば今年度終盤に渡航を考えている。しかし、それが叶わない場合には、既にチュニジアで入手した現地資料、インタビューデータ、インターネット上で入手できる新聞記事やSNS等での人々の反応などを分析することで、これまで得られたフィールドデータを補うかたちとする。 それらのデータを、イスラームの人類学における理論的な議論を視座として分析・考察することで、政変後のチュニジアにおいて台頭したイスラーム過激派とそれに抗する世俗主義やスーフィー教団の動態を明らかにする。 そこで得られた成果の発表に関しては、日本中東学会の機関誌『日本中東学会年報』、日本文化人類学会の機関誌『文化人類学』などへの投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
2018年度に本務先が変わり教育エフォートが増加した影響を受けたことで、2019度への繰り越し金が生じていた。加えて、2019年度も前年度同様の教育エフォートであったことで、未使用額が大幅に生じた。 2020年度には、2018年度及び2019年度に実施できなかった成果発表のためにそれらの当該助成金を使用する予定である。具体的には英語での成果発表のための英文校閲代、発表のための旅費などにあてる予定である。 また、COVID-19の影響で令和2年2月~3月に実施した現地調査で計画通りのフィールド調査ができなかったことから、当該助成金をもちいてそれらを補う調査も行う予定である。
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Research Products
(4 results)