2020 Fiscal Year Research-status Report
政変後のチュニジアにおけるイスラーム過激派と世俗主義の動態に関する人類学的研究
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17K13287
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
二ツ山 達朗 香川大学, 経済学部, 准教授 (20795710)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イスラームの人類学 / 聖者廟をめぐる実践 / イスラームの聖者崇敬 / モノの人類学 / 「アラブの春」後の中東諸国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2011年の「アラブの春」後のチュニジアにおいて台頭したイスラーム過激派と、それに抗する世俗主義やスーフィー教団の動態を明らかにすることにある。補助事業期間の延長を行ったことで4年目となった本年度は、昨年度までの調査の遅れを取り戻すべく、チュニジアの北部・中部・南部のモスク、宗教教育施設、聖者廟などにおいてフィールド調査を行う予定であった。 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響で、現地調査は一回も実施することができず、インタビューや参与観察などの文化人類学的な調査を主体とする本研究課題に大きな影響を与えた。加えて現地における文献収集ができなかったことも進捗状況の遅れをもたらした。また初年度に組織化した「イスラームの人類学勉強会」も、新型コロナウイルス感染症の影響で対面での実施が叶わなかったことなどから、活動は停滞した。 一方で、国内で実施できる新たな研究手法を模索したことで課題解明が進捗した点もある。具体的にはインデックス・イスラミクスを用いて関連研究を網羅的に収集・分析し、先行研究の整理を行った。また在日チュニジア人研究員生に、インターネット上で収集できるチュニジアの情報分析を依頼した。SNSなどのインターネット上の言説を分析することで、現地調査の代替として遜色のないデータ収集を行うことができた。 このように現地調査や対面での研究会が開催できない問題があった半面、インターネット上の分析という新たな調査手法を試作できた点で、課題遂行はある程度進捗していると考えられる。研究成果の公表に関しては、日本語による書籍の章分担の論考1本、エッセイ6本、口頭発表1点を発表した。当初の計画とは異なるものの、一定の研究成果をアウトプットできたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症のために2019年度末(2020年2~3月)に実施できなかったチュニジアにおける聞き取り調査や参与観察は、2020年度も実施することができなかったた。 しかしながら日本に留学しているチュニジア人研究員生に、インターネット上の情報収集を依頼し、研究課題の遂行を試みた。調査では著名人や政治家、ウラマーなどが政変後の過激派やスーフィー教団の動態、聖者廟の破壊事件に対してどのような発言をしたのかを収集した。また、民衆の間における過激派と世俗主義に関するSNS上の反応を収集・分析した。現地調査で行うことができなかった言説分析を、インターネット上で代替し研究課題の遂行を試みた。 また京都大学に所蔵されているインデックス・イスラミクスを用い「アラブの春」以降に発表された関連研究を網羅的に収集し、先行研究の分析を行った。この作業により、先行研究の把握量が飛躍的に増し、議論に厚みをもたせることにつながった。 研究成果の公表に関しては、研究実績の概要に記載の通り、当初の計画とは異なるものの、一定の研究成果をアウトプットできたと言える。このことから進捗状況を「やや遅れている」とし、補助事業期間の一年間の延長を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の特例措置により、さらに補助事業期間を一年間延長した。 最終年度においては、現地調査が実施できるか不確定な面も多い。実施できる場合には、2020年度に計画予定の、チュニジアの北部・中部・南部のモスク、宗教教育施設、聖者廟などにおける聞き取り調査を行う。一方、渡航が難しい場合は、インターネット上の言説の収集・分析を継続する。 それらの事例分析を中東地域研究における先行研究上に位置づけた考察を行い、研究課題の成果を発表したいと考えている。具体的には、日本中東学会の機関誌『日本中東学会年報』、日本文化人類学会の機関誌『文化人類学』などへの投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、現地調査が実施できなかったことによる。 2021年度は渡航が可能な場合は旅費に、渡航が叶わない場合はインターネット上の情報収集をするための人件費にあて、フィールド調査の代替とする。
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Research Products
(4 results)