2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13288
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
川口 ひとみ 神戸大学, 人文学研究科, 学術推進研究員 (70710458)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日清修好条規 / 領事裁判権 / 日中関係史 |
Outline of Annual Research Achievements |
日中領事裁判に関して、条約や法学的な面から枠組みをとらえる研究と、実際の動きを知ることができる史料収集とを並行しておこなった。史料調査に行った内容については以下の通りである。 4月、愛知県公文書館において、主に、『府県往復綴』、『官省上申伺綴』、『私雇清国人旅行免状返納ノ件』などの調査を行い、明治、大正、昭和期の華僑が何か行動をおこす際の申請方法について確認した。5月、国立国会図書館で領事裁判関係論文について調査をし、有安香央理「明治前期外国人関係訴訟にかかわる裁判制度」(『法学研究論集』第44号2016.2)や、青山治世「近代中国の在外領事とアジアー華人保護と領事裁判権からみる近代的変容ー」(第16回学術研究会研究発表概要)などの論文複写をおこない、関連する先行研究と研究の不足部分に関する点を確認し、現在所持している史料のなかから使用されていない史料をピックアップした。 8月、国立国会図書館と外交史料館で領事裁判権に関する文献調査や『外事警察概況』から日清修好条規締結中と条規が解消されてから後の動きを確認した。そのなかで『治外法権に関する慣行調査報告書』(東亜研究所、1941)の存在を知り、1月に国立国会図書館で再確認した。 華僑華人研究会の例会や、11月18日~19日に長崎大学で開催された世界海外華僑華人学会長崎会議に参加し、華僑と地域社会との関わり、華僑の訴訟に関する史料について意見交換をおこなった。長崎歴史文化博物館では日清修好条規以前の訴訟処理が記された史料調査をおこない、日清修好条規前後を含めた事例を収集することができた。 大正から昭和にかけ、神戸を拠点に活躍した弁護士で、その後約5年4か月にわたって最高裁判事も務めた山田作之助(1896~1995年)に関する史料調査と整理をおこない、その成果をパンフレットと神戸大学図書館での展示で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国人と中国人との訴訟、日本人と中国人との訴訟に分類したうえで以下の5つの時期に区分し、訴訟手続き、裁断内容等に変化があるのかどうかの確認作業が、日本の文献に関しては順調に進んでいる。 1、明治元年(1868年)に福建会館が設立される以前。2、明治元年(1868年)に福建会館が設立されて以後。3、日中間の双務的領事裁判権を規定した日清修好条規締結(1871年)後。4、長崎に清国領事館が開設(1878年)されて以降。5、日清修好条規が失効した日清戦争(1894年)以降。 3、4に関してはすでに収集した資料を順次釈文し、中国人と中国人どうしの訴訟、日本人が被告中国人が原告の訴訟、中国人が被告日本人が原告の訴訟に分けた研究が進んでいる。しかし、1と2の時期の資料読解が難解であり、進捗が遅れている面もある。5に関しては、『外事警察概況』や『治外法権に関する慣行調査報告書』(東亜研究所、1941)を手掛かりに法制史から見た調査を進めている。しかし、個別の訴訟案件が見つけられていない点を今後の課題にしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の史料調査研究を断続的に進める傍ら、海外への調査も合わせ研究を進めたい。日本における領事裁判の各案件に関する清朝側のまとまった史料は、現時点では確認できないが、現在利用できる既刊・未刊の中国側の外交史料『清光緒朝中日交渉史料』、『清季中日韓関係史料』、『清季外交史料』、台北・北京所蔵の「総理衙門トウ案」等を調査し、さらに台北・中央研究院近代史研究所に所蔵されている「清季駐韓使トウ案館」中の訴訟関係史料の調査、清朝末期の1906年から民国初期にかけて在漢城総領事を務めた馬廷亮が残した当該時期を含む手稿日記が北京大学図書館に所蔵されているので、北京の中国第一歴史トウ案館、中国社会科学院近代史研究所、中国国家図書館、北京大学図書館、天津図書館などを中心に文献・史料調査をおこない領事裁判関係の記録を整理・分析する。29年度と同様に国内・国際学会へ参加、発表し見識を深め広げる。以上で得られた史料の分析を通して、清朝在日領事が行った裁判の実態や日本側諸機関との交渉について論文を執筆、投稿する。 日本国内に残存している資料がまだ多くあり、釈文が進んでいないものもあるため、引き続き国内史料に力を入れる可能性もある。手元にある史料読解の進捗を見つつ海外での史料調査を調整したい。
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Causes of Carryover |
出張費を清算した結果、予定より少なくなったことに気づかずその額が未使用のまま次年度に繰り越しになってしまった。 学会参加、資料調査費用として次年度に使用致します。
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Research Products
(2 results)