2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K13288
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
川口 ひとみ 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (70710458)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日清修好条規 |
Outline of Annual Research Achievements |
日中領事裁判に関して、条約や法学的な面から枠組みをとらえる研究と、実際の動きを知ることができる資料収集とを並行しておこなった。資料調査に行った内容については以下の通りである。 東京都公文書館において「清国並朝鮮国駐在領事裁判規則」など近代日中領事裁判権の運用に関する研究資料収集をおこない、日清以外の関係がどのように形成されていたのかについて確認した。国立国会図書館において、主に、清日貿易史の研究、「居留地時代(1859~1899年)における「開国日本」の実態と「外国人」-在留清国人の地位、管理問題を中心に―」などの資料調査をおこない清国人の管理問題について調査を進めた。東京都の国立国会図書館、公文書館などで確認することが難しい北海道の華僑について調査をおこなうため札幌と、領事館が置かれていた函館へ行った。札幌市資料館で「「刑事事件の手続き」司法の流れ」展示を見、学芸員に当時の民事・刑事訴訟案件の北海道での手続き、当時の裁判所の構造についてうかがった。函館市中央図書館で「明治・大正・昭和初期における北海道華僑社会の形成」、「はこだて中華会館」、『函館市史』、「はこだて市史編纂室だより」など函館華僑に関する資料収集をし、函館市旧イギリス領事館では、函館開港の歴史、領事館の役割などを確認した。 学会発表では、条約、法に基づく裁判の流れを研究するなかで、近代日中領事裁判権の運用を論じるためには、法学的見地からの視点も重要であることを再確認し、調査収集した史料を基に「日清修好条規を起点とする領事裁判の仕組み-『治外法権に関する慣行調査報告書』を手がかりに-」として神戸華僑華人研究会で発表した。 投稿論文では、神戸大学社会学研究室『社会学雑誌』に「日清修好条規と領事裁判―逆訴、控訴、上告の仕組み」として投稿し、2019年6月に掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、海外の図書館、資料館を中心に文献・史料調査をおこない領事裁判関係の記録を整理・分析をする計画をしていたが、国内の資料が想像以上に多かったため、その分析と既に持っている資料内容に関連する資料の調査を優先した。そのため、海外についての資料調査に遅れが出たが、国内の資料の収集と整理分析については十分な進展があった。その成果を学会で発表し、資料の分析を通して、清朝在日領事が行った裁判の実態や日本側諸機関との交渉について論文を順調に執筆、投稿できた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、長崎華商の民事訴訟について詳細に記録されている『簿書鞅掌』をまとめ、長崎華僑と地域社会、領事との関係を整理した論文を単著としての刊行を目指し執筆している。 11月1日~11月3日福華国際文教会館、台湾大学でおこなわれる「東アジア日本研究者協議会 第4回国際学術大会」に参加を予定している。その際、台北・中央研究院近代史研究所が所蔵する清朝の在朝商務委員や領事が行っていた具体的な裁判記録の調査もおこないたい。 国内の資料収集をおこなった結果、予定していたよりも多くの資料が見つかったため、その資料解読に力を入れたい。また、その現在持っている資料の内容に関連する別の資料が存在するかどうかの確認も進めたい。字のくずし方が激しいものも多々あり、釈文に難航しているため、くずし字に詳しい先生に現在協力を要請している。
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Causes of Carryover |
海外に資料調査に行く予定が国内の調査のみになったことと、北海道へ調査する際の飛行機代が、北海道復興割のチケットがとれ安くなったため。 使用計画は、台湾への学会発表と調査費用に使用。
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Research Products
(2 results)