2017 Fiscal Year Research-status Report
日本統治時代台湾における「新女性」の構成と多元的台湾社会の実態についての研究
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17K13289
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤岡 達磨 神戸大学, 人文学研究科, 研究員 (00611849)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 新女性 / 台湾 / 文化 / 社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
政策の資料および当時の台湾における主要な女性雑誌(『台湾愛国婦人』『婦人と家庭』『台湾婦人界』など)と新聞などの資料を国立台湾図書館および国立国家図書館へ赴き、収集を行った。また台湾南投県中興新村に赴き、政策面で重要な資料である『総督府文書』の閲覧と収集を行った。また、台湾大学及び台北師範大学において旧高等女学校の同窓会誌および卒業アルバムなどの資料の収集に成功した。これに加えて、国立台湾図書館で『社会教化美談集』を代表とする当時の台湾人女性の教育状況に関係する資料を入手した。 これらの研究成果は、9月に香港大学で開催された文化研究に関係する国際学会であるThe Third Global Creative Industries Conferenceで”The birth of Taiwanese modern girl under Japanese colonial rule and commercialism”というタイトルで報告された。また、11月に広州の中山大学で開催された国際学術会議である「海上のシルクロードとアジア海港都市の変遷」において、”The construction of Taiwanese modern girl under Japanese colonial rule and commercialism”として報告された。 また、消費実践の理論的側面の解明のために『社会学雑誌』33号にて「想像の共同体の現実化の場所としての夜市―社会的余暇活動による経験の共有に注目して―」を公刊し、「モノと人の関係を通じた共同体の可視化 ――D.ミラーと A.アパデュライの物質文化論を中心に」と題された報告を10月に京都大学で開催された日本社会学史学会関西例会において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本統治期の台湾における主要な女性雑誌(『台湾愛国婦人』『婦人と家庭』『台湾婦人界』など)を収集し、教育や儀礼、家族形成や生活方式の変化およびその変化への適応と評価という観点から、資料整理と分析を行っている。これらの分析内容は、香港などの国際学会で報告されており、現在はこれら学会での議論の結果を反映し、論文投稿の準備を進めているところである。 〈新女性〉たちの意識の解明の面では、旧台北市立第三高等女学校(現在の台北市立中山女子高級中学との交渉は順調には進んでいないが、台湾大学や台北師範大学に所蔵されている同窓会報、卒業アルバムなどの資料の収集は順調に進展している。現在、同窓会への調査協力交渉を行っており、今後卒業生たち自身への聞き取り調査などを行う予定である。一方、日本語学習サークル「友愛会」との連絡は順調であり、彼らの当時の記憶や語りなどを収集し整理を行っている。 また、当時の総督府が出版した『社会教化美談集』などの資料を入手し、この資料の分析を通じて、高等女学校出身者とは階層の異なった台湾人女性の、国語教育との向き合い方について知見を得た。現在はこの階層差による実践と意識の差異に焦点を当てて分析を行っている。 また当初に想定していた日本統治期における学歴を通じた社会上昇(新女性)とは異なる経路として、身なりと振る舞いを通じた社会上昇の戦略としてのモダンガールに注目し、関連する台湾で出版された中国語資料を収集し、分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き当時の資料の採集と読解に務める。やや進捗が遅れ気味である旧台北市立第三高等女学校との連絡をすみやかに行い、資料研究を補完するものとして一次情報の入手を図り、分析を行っていく。日本語学習サークル「友愛会」会員との連絡は比較的順調であるため、本年度も継続的に聞き取りを続けていく。また2018 年度では当時台湾で出版された礼儀作法書やエチケット本、マナー本などの書籍資料の収集を行う。同時に当時の日本内地における言説や資料についても収集し、台湾における資料との対比を行う。同時に当時の日本内地における言説や資料についても収集し、台湾における資料との対比を行う。特に、モダンガールや主婦に関する言説については同時期に上海や欧米においても展開されており、国際的な商業主義と各地における商業文化のありように注目することで、台湾における言説空間の特徴を立体的に捉えることが可能になるだろう。 2018 年度は計画最終年度であるので研究成果をとりまとめ外部に積極的に発信していく。まず 前年度に行った調査データを用いて論文の執筆および投稿を行う。特に前年度で行った学会発表を下敷きとして、「新女性」の実践と中間的意識の構成について検討する論文と台湾「モダンガール」の表象と商業文化の関係について検討する論文を執筆する。また研究協力者である香港大學の王向華副教授と香港の嶺南大學の邱愷欣高級講師と協力し、複数の文化の交差点である台湾社会における文化的実践を通じて、台湾の植民地近代社会について考察する共著書を出版することを目指す。
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