2019 Fiscal Year Research-status Report
新資料による1950年代インドネシアの華人をめぐる政治状況分析
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17K13295
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松村 智雄 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 講師 (30726675)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 1950年代インドネシア議会議事録 / 生活報 / 中国語メディア分析 / 共栄報 / リアウ華人 / ジャワ中心主義の相対化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度までに、1950年代のインドネシア国民議会の議事録中の当時の華人社会に関するインドネシア政府側の議論についての資料(「新資料」の大部分)のほか、当時のインドネシア、ジャワ島を中心に講読されていた中国語紙である『生活報』の復刻版(中国にて復刻)も入手した。1950年代のインドネシアの華人史を見る上で、これまで『新報sin po』(インドネシア語版)のようなインドネシア語のメディアを中心として分析されてきており、これは中国語のリテラシーを持たないジャワのプラナカン華人に傾斜した理解への偏向の原因となっていた。これに対して、代表者は同時代の中国語で書かれた新聞メディアの解析をすることが可能になった。 また2019年度には、インドネシアの日本軍政期に当地の華人社会向けに発行されていた日刊紙『共栄報(中国語で書かれている)』が復刻された。特に日本軍政期の施策は、その後の華人社会の性格(それは地域ごとに多様性を持つが)を規定したことは以前から指摘されてきたため、この『共栄報』の分析を踏まえた上で全体のテーマに取り組む。 さらに、2019年度夏季休暇時には、「インドネシア」という枠組みでは括れない、ジャワのプラナカンと対照的な地域としてマレー半島の対岸、スマトラ島東部のリアウ州の華人社会の動態について調査する機会があった。 この地域には福建系華人が多数居住しており、マレー半島、シンガポールとの交流、インドネシア独立運動期に生じた華人と非華人との武力衝突などについて資料収集、聞き取り調査を行った。これらはジャワのプラナカン華人像を相対化するのに役立つ発見があった。これをもとにジャワ中心主義を相対化しながら、当初の研究課題に沿って、これまで得られた資料を分析し、論文執筆を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、代表者の所属研究機関が変わり、新しい環境での職務遂行と教育活動のための新たな準備が必要となった。そのためそちらにも力を注ぐ必要があったため、十分な研究時間を確保できなかった。 その中においても、夏季休暇時にはインドネシアにおける当該研究課題遂行のための現地調査を行うことができた。しかしながら、これまで得られた各種資料を整理し、成果として発表するには時間が不足していた。そこで研究期間延長申請を行い、1年の延長を許可された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度となる。現在所属の研究機関においても2年目となり、研究活動に割くことができる時間も増加すると思われる。これまで収集した資料を総合し、さらに必要な文字資料を入手し、分析し、査読付き学術雑誌へ論文を投稿する。
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Causes of Carryover |
昨年度は代表者の所属研究機関が変わり、新しい環境での職務遂行と教育活動のための新たな準備が必要となり、そちらにも注力する必要があったため、十分な研究時間が確保できなかった。今年度は最終年度となるため、これまで収集した資料を総合、分析し、査読付き学術雑誌へ論文を投稿する。
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Research Products
(1 results)