2022 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of the political situation regarding the Chinese in Indonesia in the 1950s using newr material
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17K13295
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松村 智雄 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 講師 (30726675)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 1950年代インドネシア国民議会議事録 / 生活報 / 中国語メディア分析 / 共栄報 / リアウ華人 / ジャワ中心主義の相対化 / 国籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新たな調査は行わず、これまでの研究期間に収集した史料の分析を行った。また成果を発表する場として、ブルネイ大学が主催した東南アジア華人の市民権とトランスナショナリズムに関する国際シンポジウムにて成果を報告した。それに基づいて英語論文を執筆中であり、上記のシンポジウムの成果出版物として2023年度中には出版予定である。 メインの史料である1950年代インドネシア議事録については、それを「1950年代末にかけて、インドネシアの市民権・国籍をめぐる論争が沸騰し、そこで、それまでのオランダ植民地期に起源を持つ出生地主義が明確に否定されていく過程はどのようなものか」という問いに基づいて分析した。 その結果、以下のことが明らかになった。上記の変容は、確かに華人を取り巻く状況に大きな変化を与え、結果的には華人を標的にした華人迫害の様相を呈したものの、元来華人を排除するという意図は前景化することなく「インドネシアの枠組みを定める」一連の施策、つまり新生国家の人の枠組み(国籍)及び国土の枠組み(行政区画の再編と国境問題)という文脈で不可逆的に生じてきた側面が明らかになった。それは実際の国民議会議事録に登場する議論から裏付けられるものである。そこでは国境問題とともに、国籍、出入国管理、パスポートの問題などがしきりに議論され、それまでは緊急立法であったものを、正式な法律に格上げするための議論が行われている。また、国民の枠組みを考える上で、これまで先行研究で明らかになっていなかった部分として、インドネシアの兵役との関連についても完全ではないが明らかにすることができた。インドネシアでは1958年に地方反乱が起こっておりこの鎮圧とその後の国防のために国軍の兵力の増強が目指されるが、その際の兵役が国籍問題と絡んで議論されていた。
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Research Products
(1 results)