2021 Fiscal Year Annual Research Report
Fee-charging sacred places: A study on the economic zoning and public management of religious spaces
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17K13313
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
門田 岳久 立教大学, 観光学部, 准教授 (90633529)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地域開発 / インフラストラクチャー / 空港建設 / 佐渡 / 文化運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は生活領域、宗教的空間、路地、農耕地などのヴァナキュラーな空間が、地域開発や文化遺産化、観光化など、様々な開発現象に接することで改変の対象となり、私的なものから公共的な空間へと変化していくプロセスと、それが在来の生活に及ぼす正負の影響を、人類学的なアプローチで研究するものである。最終年度に当たる2021年度は、前年度に新型コロナウィルス感染症により完遂できなかった現地フィールドワークに重点を置きつつ、データや理論的研究を総合し、成果のとりまとめに重点を置いた。特に戦後日本の国土開発が村落に及ぼした生活意識上の変化について調査を行った。具体的には、新潟県佐渡島における新空港建設計画とそれに対する反対運動を事例に、当時の新聞記事、写真等を収集・分析するとともに、当時参加した人々のインタビューを実施した。同計画は、国の国土開発計画と連動し、行政主導の強引な計画が土地収容や水資源問題とも絡んで多くの反対を巻き起こした。その運動は結果的に青年団や公民館運動の活性化を促したことが観察されるとともに、運動の背景には、宮本常一ら外部の知識人による啓発が関わり、こうした人的交流の中から生活空間を守る主体が形成されことが明らかとなった。以上の成果は文章で公表するだけでなく、佐渡市立佐渡博物館の展示『宮本常一写真で読む佐渡 「自前の思想」』(2022年3月-6月)にて公表し、市民に還元を行った。以上を含め本研究は5箇年の期間中、沖縄・佐渡島をフィールドとした聖地や村落の観光化・開発に伴う変容過程の民族誌的成果を複数刊行した。現代の地域開発は従来の「開発対住民」あるいは「伝統の破壊か維持か」といった二分法的図式ではなく、ヴァナキュラーな領域への「配慮」とともにある開発、また生活領域から立ち上がる住民参加型開発などが複雑に入り組む状況が明らかとなった。
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