2017 Fiscal Year Research-status Report
シェリング芸術哲学における雰囲気概念研究―風景画論と芸術実践活動に注目して
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17K13314
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八幡 さくら 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (80773556)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 芸術哲学 / 風景画 / 雰囲気 / 気分 / ドイツ観念論 / ロマン主義 / シェリング / シュレーゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はシェリング芸術哲学と同時代の雰囲気(die Stimmung)概念に関する文献の調査・整理・精読を行い、シェリングの雰囲気概念についての同時代の思想家との影響作用史について研究を進めた。 平成29年4月26日に大阪学院大学で開催された第59回シェリング・ゼミナールにおいて、著書『シェリング芸術哲学における構想力』(晃洋書房、平成29年)と松山壽一『造形芸術と自然』(法政大学出版局、平成27年)の合同合評会の評者として参加し、シェリング研究者と議論を行った。収集した文献の検討を行い、平成29年7月23日に神戸大学哲学懇話会研究会において、シェリング芸術哲学の風景画論と同時代の風景画家J・A・コッホとの影響関係を検証した研究を発表した。さらにシェリングの風景画論における雰囲気概念に、同時代のロマン主義の思想家A・W・シュレーゲルの『芸術論』からの影響が大きいことを、両者の文献の比較研究によって明らかにした。この研究成果を、平成29年10月7日國學院大学で開催された第68回美学会全国大会において、研究発表「シェリングの風景画論における雰囲気-主観と客観の恊働として」と題して報告し、それを元に論文を執筆し、同会の学術雑誌に投稿した。本論文は雑誌『美学』(第69巻第1号、平成30年夏刊行予定)に採択された。 主な資料調査としては、シェリングの芸術体験および同時代のロマン主義の風景画についてドイツで資料調査を行った。調査地はドイツのドレスデン・アルテ・マイスターおよびノイエ・マイスター、ミュンヘンのピナコテーク、バイエルン州立図書館、造形芸術アカデミーで文献・資料調査を行い、近代ドイツ美術史の研究者と情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内の研究会での発表を通して様々な研究者から意見や質疑を受け、さらに研究を推進し、学会の全国大会での発表と査読付き論文の採択に繋げることができた。またドイツでの資料調査においてドイツ人研究者と情報交換を行う中で、シェリング芸術哲学に関係する新しい重要文献を入手することができた。以上の研究状況から、研究計画の予定を順調を進めており、今年度収集した文献をもとに今後さらに研究を押し進めることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツの絵画館および図書館において収集した文献の整理・精読を通して、シェリングと同時代の思想家の雰囲気概念の影響作用史をより明確化する。シェリングの芸術作品の鑑賞体験と批評活動が、同時代の芸術やアカデミーでの芸術教育にどのような影響があったのかについて、当時の新聞や美術館資料をもとに調査を進める。 シェリングの芸術哲学と造形芸術アカデミーでの活動との関連を文献から検証し、その成果を平成30年9月にハワイで開催される第6回北アメリカシェリング協会大会で発表する。
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