2018 Fiscal Year Research-status Report
シェリング芸術哲学における雰囲気概念研究―風景画論と芸術実践活動に注目して
Project/Area Number |
17K13314
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八幡 さくら 東京大学, 教養学部, 特任助教 (80773556)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | シェリング / ドイツ観念論 / 風景画 / 造形芸術 / 芸術アカデミー / 気分 / 雰囲気 / ロマン主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、シェリング芸術哲学とそれに関わる同時代の思想家および画家の風景画に関する文献・資料調査と、国内外の学会において研究成果の発表を行った。 シェリング芸術哲学に関する一次文献(『芸術の哲学』『造形芸術の自然への関係について』)の精読と二次文献の調査を国内外の図書館で行い、とりわけ2019年1月にはシェリングの芸術実践活動に関してはドイツ・ミュンヘンのバイエルン学術アカデミーのシェリング・コミッションの協力によって、国内では入手困難なシェリング芸術哲学とバイエルン造形芸術アカデミーに関する文献を収集することができた。 今年度の主な研究成果は、論文1件(雑誌『美学』第69巻1号)、国内会議における発表2件、国際学会における発表1件である。2018年4月には神戸大学人文学研究科において人文学についての国際ワークショップ"Humanities in a Changing World: New Ways, Globalization, Responsibility"に参加し、個人研究発表"Die Stimmung der Landschaft in der Kunstphilosophie Schellings"を行い、トリア大学やクザーヌス大学の研究者たちとドイツ観念論研究に関して議論した。同年9月にはアメリカ・ハワイ大学ヒロ校にて開催された第6回北アメリカシェリング協会大会に参加し、シェリングの風景画論における産出的自然概念についての研究発表"Productive Nature of Landscape in Schelling's Philosophy of Art"を行った。シェリング研究に関して北アメリカおよびドイツから参加した研究者と議論を交わし、最近の研究情報を交換した。本研究発表内容をもとに論文を執筆し、同学会誌(Kabiri)に論文として投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外の国際会議に参加して研究発表を行い、国外の研究者達と議論を重ね、より研究内容を深化させることができた。こうした国際会議の場において、海外の研究者から国際的なシェリングおよびドイツ観念論についての研究状況を直接的に知ることができた。シェリング・コミッションの研究員の協力によって国内では入手困難な文献を手に入れることができ、これらをもとにさらに研究を押し進めることができた。 こうした国際会議への参加と文献調査を通して、国内外の研究者間のネットワークを築くことができた。ハワイ大学では、ドイツにおける国際シェリング協会と北アメリカシェリング協会、日本シェリング協会からの参加者が集うことができ、三者が協力することによって、今後さらに広範囲の国際的な研究ネットワークを構築していくことを約束した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで収集した文献および資料の整理・精読を続けるとともに、さらに新たな文献収集を押し進め、シェリング芸術哲学と同時代の芸術がどのような関係性にあったのかを理論的かつ実証的に検証する。 シェリングによる作品分析を検討するため、ドイツを中心にヨーロッパの美術館において、シェリングの芸術哲学期と同時代の19世紀の古典主義とロマン主義の絵画を調査する。シェリング哲学研究において見過ごされてきた、バイエルン造形芸術アカデミーでの彼自身の芸術批評や作品収集活動に関する資料を調査し、同時代のロマン主義者や芸術家の文献や書簡から当時の芸術観を検証する。 以上の文献調査に基づいた研究成果を国内外の会議で発表し、様々な研究者と情報交換や交流をすることによって、これまでに築いてきた国際的な研究者ネットワークをさらに強化し、シェリング研究の推進に寄与しうる。
|