2017 Fiscal Year Research-status Report
徳倫理学における「道徳的な性格」という考え方の意義と可能性についての研究
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17K13318
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
立花 幸司 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (30707336)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アリストテレス / 徳倫理学 / 脳神経倫理学 / 有人宇宙開発 / 宇宙医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、道徳的な性格という、徳倫理学のもつ優れたアイデアの一つについて、そうした性格の習得をめぐる問題を検討した成果を発表した。まず、徳倫理学と状況主義の間にあった論争を分析し、その論争の背景にある論点の一つとして、そうした性格の習得をめぐる問題をとりだした。 その上で、近年のニューロフィードバック研究をめぐる脳神経倫理学的考察を土台として、二つの論考を刊行した。一つは、徳倫理学において「学ばれるものとしての道徳的な性格における、『道徳』というもののあり方」の考察である。もう一つは、徳倫理学において「道徳的な性格を学ぶ仕方としての習得というあり方」の考察である。対となるこの二つの論考を通じて、現代徳倫理学における道徳的な性格というもののもつ身分を、習得という観点から検討することができた。 また、そうした脳神経倫理学を用いたアプローチとは別に、有人宇宙開発における宇宙飛行士の精神・心理的な側面での健康管理という宇宙医学・宇宙心理学研究に着目した論考も刊行した。宇宙飛行士の健康支援として取り組まれてきた宇宙医学・宇宙心理学研究が地上の人々の精神心理支援に活かされた実績があることに着目し、そうした宇宙医学・宇宙心理学研究の地上への応用がどのようなかたちでなされたのか、またそれらにはさらにどのような応用の可能性があるのかを検討し、その検討を通じて、そうした研究成果から示唆される人間の道徳的な性格のあり方についても検討をおこなうことで、道徳的な性格の習得の仕方について、新たな角度から検討をすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
徳倫理学と状況主義の間にあった論争を分析し、その論争の背景にある論点をとりだし、それに対する自身の研究を行うとい平成29年度の研究実施計画を、道徳的な性格の習得という論点に着目することで三件の論文刊行というかたちで、遂行することができ、平成30年度の研究実施計画に速やかに進むことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画の通り遂行し、とりわけ平成30年度は、平成29年度の成果をふまえつつ、道徳的な性格の意義と可能性、性格が獲得される際の状況の役割、近年のパーソナリティ心理学研究の動向、そして心理学分野以外の知見のそれぞれの検討を実施し、国内外の学術会議での発表や論文として成果を挙げる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究出張旅費や英文校正等について当初予定していたよりも節約して実施することができたため。 また、当該の額の使用計画は、平成30年度の計画に沿って実行し、平成29年度の成果をふまえつつ、とくに、道徳的な性格の意義と可能性、性格が獲得される際の状況の役割、近年のパーソナリティ心理学研究の動向、そして心理学分野以外の知見のそれぞれの検討、国内外の学術会議での発表、論文投稿に必要な経費等として使用する。
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Research Products
(7 results)