2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13321
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡名喜 庸哲 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (40633540)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レヴィナス / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は本研究初年度にあたる。レヴィナスの後期思想について、「身体」「意味」「時間」という三つのテーマで、解釈学的視座および応用哲学的視座からその意義を解明するという目的のもと、2017年度は、とりわけ1)後期レヴィナスについての一次文献、二次文献の整理、2)関連する思想家のテクストの精読、3)とりわけ「身体」概念についての哲学的検討を研究計画の軸としていた。 1)の一次文献については、『レヴィナス著作集』第三巻の翻訳作業を進め、訳出作業を終えた(2018年度中に公刊予定)。二次文献については、国外出張を利用し、最新研究の収集・精読を行うことができた。2)関連する思想家のテクストの精読も進めた。研究計画に名を挙げた哲学者については、ハイデガー、ローゼンツヴァイクの読解を進めたほか、それ以外にも、シモーヌ・ヴェイユ、ギュンター・アンダース、クロード・ルフォールらについて研究をまとめることができた。さらに、ジャック・デリダの重要なテクストの翻訳にも携わった。3)については、研究計画に記した内容に関しては若干研究の進捗が遅れている。ただし、計画には挙げられていないが、グレゴワール・シャマユーというフランスの若手哲学者が行っている遠隔テクノロジー時代における「身体」概念の変容について集中的に研究を行なうことができた(2018年中に成果発表を予定している)。これは、レヴィナスの後期思想の意義を相対的に、とりわけ応用哲学的視座から検討するに際してはきわめて重要な観点を提供するものであり、望外の成果と言える。 さらに、2018年3月にパリで本研究成果の一部を生かした口頭発表を行なった。そこでは、ジョゼフ・コーエン、ラファエル・ザグリ=オルリ、オリエッタ・オンブロージら、仏語・伊語圏における気鋭のレヴィナス研究者らと知り合う機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に記したように、初年度の研究計画の三つの軸のうち、二つについては順調に進展している。一つについては、計画時に名を挙げた研究者とコンタクトを取ることができず、それに関しては進展が遅れていると言えるが、しかし、グレゴワール・シャマユーの「身体」概念についての検討が進んだことは、それを補って余りある新たな進展と言えるため、全体としては順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に研究計画に記したとおりに研究を推進していく予定である。 ただし、2018年中に、研究代表者が中心的に組織している日本国内の研究組織である「レヴィナス研究会」を発展的に改組する予定であるほか、世界的なレヴィナス研究者の来日が予定されている。これらの機会は研究計画時には想定できなかったものだが、いずれも本研究を進めていく上ではきわめて有益なものである。そのため、こうした機会を積極的に活用し、発表や意見交換を通じて本研究に生かしていくと同時に、研究計画に記した研究協力体制の強化にも生かしていく。
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Causes of Carryover |
2018年3月にも国外出張を行い、そのための旅費を計上していたが、参加予定であった国際シンポジウムが招聘講演となったため、旅費・滞在費が主催者負担となり、本研究費からの支出が不要となった。次年度以降の出張計画をあらためて精査し、それに用立てる予定である。
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