2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K13321
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡名喜 庸哲 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (40633540)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レヴィナス / 倫理 / ベンスーサン / シャマユー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目にあたる本年度の研究成果として、まず、『レヴィナス著作集』第3巻の翻訳を完成させ公刊した。9月には、その成果に基づいて、レヴィナス協会シンポジウムにおいて口頭発表を行ない、「イリヤ」と「エロス」という二つの問題系がレヴィナス思想においてどのように連関しているかを論じた。 また、フランスの哲学研究者であるジェラール・ベンスーサンの主著『メシア的時間』を翻訳公刊し、同氏の来日に合わせ、同著の意義について口頭発表を行なった。これは、レヴィナスの後期思想における主体概念、時間概念の理解にとってもきわめて重要な著作と言える。さらに、ロシアにおいてレヴィナス研究を主導するアンナ・ヤンポルスカヤ氏の来日機会を利用し、招待講演を実施した。後期レヴィナス思想における「主体性」の概念に関わるヤンポルスカヤ氏の講演は、国際的な最新の研究動向を踏まえたもので、本研究にとってもきわめて有意義なものであった。 9月には、イタリア・ローマのサピエンツァ大学で開催された国際シンポジウムに参加し、ギュンター・アンダースの技術思想に関する口頭発表を行った。レヴィナスとも交流のあったアンダースの技術思想は、現代の科学技術論における「人間」概念の変容という本研究の主たる問題関心にとってもきわめて重要である。同シンポジウムでは、この主題に関する国際的な研究者と交流し、研究協力体制について打ち合わせることもできた。この主題に関してもう一つ特筆すべきは、フランスの科学哲学者グレゴワール・シャマユーの主著『ドローンの哲学 遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』を単独翻訳によって公刊したことである。 そのほか、2018年8月および2019年3月にはフランス・パリのフランス国立図書館での資料収集・精読を目的とする海外出張を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画においては、2年目以降の研究課題としては、1)レヴィナスにおける意味論としての倫理思想の検討、2)レヴィナスの時間論についての比較研究、3)現代の科学技術論の成果を取り入れた、レヴィナスにおける「人間」概念の再考を主軸としていた。このうち、1)3)については、これまである程度研究を進めてきていると見なせるが、2)についてはまだ着手できていない。 最新研究文献の調査および国際的な研究体制の構築については、海外出張はもとより、当初の計画にはなかった国際シンポジウムへの参加や関連研究者の来日時を利用した研究協力の機会を積極的に利用することができ、当初の計画以上に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は本研究3年目となり最終年度となる。したがって、本研究の成果の取りまとめおよび公表に向けた執筆作業が今後の研究の主たる内容となる。 ただし、これまで着手できていないレヴィナスにおける時間論の比較研究については、成果が出せるように優先的に研究に取り組む。 なお、2019年度はすでに、研究計画にも記していたコリーヌ・ペルション氏の来日機会をとらえた招待講演のほか、レヴィナス協会(旧レヴィナス研究会)を主体とした国際シンポジウムおよび国内研究大会が実施される予定である。こうした機会と連繋することで、本研究の促進につなげたい。
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Causes of Carryover |
2019年2月に実施したヤンポルスカヤ氏の講演謝礼については、必要書類の取り寄せに時間がかかるために経理処理が次年度に繰越となった。
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