2019 Fiscal Year Annual Research Report
Sufficientarianism in Normative Theory of Social Security Schemes
Project/Area Number |
17K13322
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
保田 幸子 明治学院大学, 社会学部, 研究員 (60774776)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分配的正義論 / 平等 / 十分主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、関係的平等論と応用的研究として医療資源の分配の検討をおこなった。今年度の補助金は、おもに上記の研究を遂行するための文献の購入費に当てられた。 関係的平等論に関しては、関係的観点から不平等への異議を論じたT・M・スキャンロンの論考を中心におこなった。すなわち、従来の関係的平等論は、潜在能力アプローチに基づき人々が社会参加可能な程度の十分な保障の主張するが、基本的潜在能力を分配通貨とした十分主義とみなされる余地を残している。それに対して、社会参加の十分な保障を根拠としない関係的平等論、すなわち、人々の関係の不均衡さがもたらす結果は不正義であるから関係性の平等を達成するべきという立場は、関係的平等論も分配的正義論と同様に何らかの関係的財という尺度で計測可能だとする平等についての構想とは大きく異なったものであるといえる。この研究を進めるにあたり、政治哲学の文献を購入した。 また、社会保障の規範的研究の応用として医療資源の分配を取り上げ、運の平等主義に基づく医療資源の分配の検討をおこなった。運の平等主義に基づく医療資源の分配では、疾病がどの程度当人の責任の結果であるのか(または不運の結果であるのか)に応じて治療の優先度や治療費の自己負担割合が決まる。そのため、当人の選択の結果としての疾病を放置するとの批判もある。それに対して、各人の選好の変更を条件として自身の人生の見通しの改善を要求することができる出直し説や、各人に選択の責任を事前的に問うことで、批判は回避可能だとする議論もあり、この立場について検討した。また、この研究を進めるにあたり、生命倫理学と政治哲学の文献を購入した。
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