2017 Fiscal Year Research-status Report
日本における“善き生”の構想とは何か─「正直」の倫理思想史/比較思想史的研究
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17K13323
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
板東 洋介 皇學館大学, 文学部, 准教授 (90761205)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神道 / 正直 / 徳 / 国学 / 日本倫理思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究の中核となったのは、当初の研究計画通り、神道文献を用いての「正直」観念の変遷の過程とその神学的・哲学的内実の解明であった。地道な資料調査や先行研究の整理、小規模の研究会、また『類聚神祇本源』神道原義篇や『中臣祓訓解』の読書会を通じてその一定程度の解明を果たしたほか、新しく企画された中項目式の『日本思想史辞典』に「正直と誠」および「本居宣長とその門流」の二項目の執筆を依頼された(すでに平成29年末に原稿を提出し、出版待ちの状態である)。これは本「正直」研究の意義を広く世に問う大きな契機であるとともに、報告者の神道思想史研究が、専門学界にて定評を獲得しつつあることの証左でもある。また本研究開始前より執筆を進めていた近世儒教と国学とに関する研究書について、本年の研究成果を大幅に盛り込み、とりわけ近現代の「正直」観念に多大な影響を与えた近世国学者・賀茂真淵の「まこと」と「直し」とに関する章・節を増補した。本書は現在脱稿して初校待ちの状態であり、平成30年度中に出版される予定である。さらに現代の中学・高校の道徳科教育における宗教の意義を問うシンポジウムに参加し、道徳教育の専門家、宗教学者、文化人類学者、現場の道徳科教員らとともに登壇し、神道思想史研究の立場から、中世・近世の「三社託宣」の説く「正直」と中近世の初等教育との関係を中心に所見を述べた。これも本「正直」研究の現代日本の課題への寄与となりえたと評価できる。また「正直」研究の裾野をなす近世日本思想史研究についても、代表的な近世武士道書『葉隠』の約五分の一の訳注を担当したほか、日本朱子学の研究状況についての国際学会への報告、江戸時代の社会と環境をめぐる思考についての建築工学者との対談とその筆記の雑誌掲載など、いくつかの研究とその成果の発表とを行い、翌年度以降の研究成果の国際発信への準備を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した内容のそれぞれについて、学術的かつ広汎な影響力をもつ研究実績を出していると判断できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通り、本年度に得られた知見の積極的な国際発信が来年度以降の研究の中心となる。そのため、すでにいくつかの国際的なプロジェクトや雑誌への招待や参加承認を受けているが、いっそうこの方向を推進してゆく予定である。またこれまでの研究で得られた知見を、単発の日本語論文のかたちで各学術誌に掲載することも同時に行ってゆくことも計画している。
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Causes of Carryover |
10月末に日本思想史学会大会にて予定していた学会発表が、学内での代替不可能な業務が発生し、事前キャンセルをせざるをえなくなったため、その旅費の分が余った。来年度の学会発表のための旅費として使用することを計画している。
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[Book] 商務印書館2017
Author(s)
朱子学会
Total Pages
346
Publisher
:編『朱子学年鑑2016』
ISBN
9787100153188